俳優業だけでなく、初の長編監督作が国内外の映画祭で8冠を獲得するなど、 表現者として評価を高める斎藤工。さらに業界の環境改善にも力を入れているが、「僕ら世代が駆逐されないと本当の健全さは生まれない」と辛らつに語る。「44歳の男・斎藤工」が見据える、ミドルエイジからの歩み方とは?

◆発酵するように、年をとりたい
取材部屋の椅子に腰かけた斎藤工は、拍子抜けするほど穏やかな表情を浮かべていた。ウルトラマンのようなヒーローにも、禁断の愛に身を焦がす間男にも、名もなき誰かにもなってきた彼は、常に「自分とは何者か」を役を通して問い続けてきた表現者だ。演じる側であり、作る側でもあるその視点は、今回、Netflix映画(※1)『This is I』で演じた実在の医師・和田耕治を通して、「誰かのために生きること」の輪郭をより鮮明に浮かび上がらせた。「自分の生きる意味」を見いだした人間の強さに触れたと語る一方で、自身については「今の自分は老害予備軍」と自嘲気味に笑う。日々、自らにアラートを鳴らし続けているという表現の“鬼才”が、「目指す中年の生き方」を語った。──『This is I』は、タレントの(※2)はるな愛さんと、彼女を支えた和田医師をモデルにした物語です。最初に脚本を読まれた感想は?
斎藤:お話をいただいたときはまだタイトルが仮の状態で、和田先生と奥様が書かれた(※3)原作通りのなかなかキャッチーなタイトルになっていて、それこそ「エッジ」なプロジェクトだなと思いました。読み進めるうちに、僕に与えられた役割は、ただ実在した先生を真似ることではないとわかってきて。先生が向き合った闘いそのものや、「個人の本来あるべき理想の姿や形」を追い求める人々のお手伝いをするという、“天命”に気づいた先生その人を、どう形にするかが肝だと感じました。

◆「誰かのために」自分よりも優先すべきもの
──“天命”ですか。斎藤:「誰かのために」という言葉でまとめられると思います。自分よりも優先すべきものを見つけた人ですね。先生は、治療したその瞬間だけでなく、患者さんがクリニックを出た後の人生の時間をいかに輝かせるかということを見据え、徹底されていた。はるな愛さんご本人とは以前からご縁はありましたが、本作では完全に和田先生のフィルターを通して参加しました。主人公のアイさん(望月春希)のステージや華やかな部分をまぶしく見つめる先生の眼差し。結果として、合計600人もの患者さんたちがもともと持っていたものを輝かせる。それが自分の生きる意味だと気づいた和田先生自身の強さに、ものすごく刺激を受けました。


