「選ぶ側」と「選ばれる側」が入れ替わった、その先で
「入社してやった」というスタンスを象徴する例として、ダイエー創業者・中内功の時代を振り返ります。かつて「お客さまは神様」という思想のもと、流通革命が起こりました。昭和30年代の若手社員は、安価で活用しやすい労働力として「金のたまご」と呼ばれていました。
一方、令和の若手人材は、まさに「お客さま」として扱わなければならない存在になりつつあります。「入社していただいた」という意識が、企業側にも求められる。同じ「金のたまご」という言葉でも、その意味は半世紀で大きく変わりました。
労使の力関係が180度転換した――2026年は、その変化がはっきりと可視化される、新しい時代の幕開けといえるのかもしれません。
企業は、昔の常識のまま採用や人材マネジメントを続けていれば、これから本当に人が定着しなくなるでしょう。終身雇用や年功序列を前提にした評価、曖昧な役割分担、精神論に寄りかかった育成。そうしたやり方は、もはや「通用しにくくなっている」のではなく、「見限られ始めている」と言ったほうが近いのかもしれません。
一方で、雇われる側も油断はできません。「売り手市場」「代わりの会社はいくらでもある」といった空気を過信し、自分の市場価値を冷静に見ないまま傲慢になれば、足元をすくわれる可能性もあります。環境が変わるスピードが速いからこそ、評価されている理由や、自分が提供できる価値を言語化できない人ほど、変化に弱いのも事実です。
古い前提にしがみつく企業も、時代の追い風に酔う個人も、ともにリスクを抱えている──その現実をどう受け止め、どう動くのかが、これからの分かれ道になるのでしょう。
福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長
