離婚後の住まい探しで直面する「買えない」「借りにくい」
離婚後、Aさんはまず家を買うことを考えました。しかし、都内の不動産価格は高騰しており、手元の自己資金では選択肢が限られます。
「なら住宅ローンを」と思っても、60歳・パート勤務の単身では、金融機関の審査ハードルは高いものです。就業実績が乏しければ、返済原資を説明できません。立地を妥協し、築年数を許容しても、Aさんが「これなら」と思える物件はみつかりませんでした。
――買えない。
次にAさんは賃貸へ舵を切りました。しかし、ここでも新たな壁に突き当ります。年齢と保証の壁です。何件も内見を断られ、ようやく入居できたのは、築40年のアパート。浴室は狭く、冬は底冷えがします。タワマンの眺望と静けさは、もうどこにもありません。
気づけば、離婚時に受け取った財産分与は、引っ越し費用や家財の購入、生活費などで思った以上に減っていきました。
「こんなはずじゃなかった」
Aさんは、働くしかありませんでした。Aさんはアパートの薄い壁をみつめながら、震える手で履歴書を書きます。職歴の空白が、Aさんの心に重くのしかかりました。
就労の設計がないと、分与金は“生活費に溶ける”
離婚時にまとまったお金を得ていても、生活費の赤字が続けば数年で大きく減る可能性もあります。生活費は、2人分が1人分になるからといって単純に半分になるわけではありません。たとえば、毎月5万円の不足なら、1年間で60万円、10年では600万円が消えていきます。医療や介護が必要になったときの「万が一」を踏まえると、日々の生活に充てられる金額は思ったよりも少ないのです。
また、年金についても注意が必要です。配偶者が厚生年金もしくは共済年金に加入していた場合、離婚時に年金分割を申請できますが、分割できるのはあくまで婚姻期間の記録のみ。婚姻期間が長いほど、対象となる記録は増えますが、年収によっても金額は変わります。
なお、厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、離婚分割により受け取れる年金額は月平均3万3,575円、3号分割のみの場合は女性で月8,317円です。「思ったよりも少なかった」という人は多いです。
離婚後も生活の安定を図るためには、就労と年金をセットで組み立て、家計収支の実態と照らし合わせながら整合性を確認しないと成り立たちません。
