モームリ社長の逮捕には「見せしめ的な意図があったのでは」法人も刑事責任を問われる可能性を弁護士が指摘

モームリ社長の逮捕には「見せしめ的な意図があったのでは」法人も刑事責任を問われる可能性を弁護士が指摘

退職代行サービス「モームリ」の運営会社社長らが、弁護士法違反の疑いで逮捕された。退職代行を巡る是非はこれまでも議論されてきたが、運営側が「逮捕」される事態にまで発展したのは異例だ。

問題とされたのは、退職の意思を伝える行為そのものではない。退職トラブルに発展した案件を弁護士に紹介し、その見返りとして紹介料を受け取っていた点が、弁護士法72条に違反すると判断されたという。

だが、多くの人が疑問に思うはずだ。不動産や人材業界では当たり前の「紹介料ビジネス」が、なぜ弁護士の世界では犯罪になるのか。さらに、在宅捜査も可能だったはずの事案で、なぜ「逮捕」という強硬手段が取られたのか。

この事件は、退職代行というサービスそのものではなく、法律トラブルを薄利多売で回すビジネスモデルへの警告とも読める。弁護士の視点から、その本質を読み解く。

モームリ
写真/産経新聞社

◆「紹介料ビジネス」が一線を越えた理由

今回の逮捕容疑となった「弁護士法違反」とは、具体的にどのような行為が問題になったのだろうか。

「今回問題となっているのは、弁護士法72条です。その内容として『顧客を弁護士に周旋し、その対価として利益を得る行為』を禁じられています」とアディーレ法律事務所の南澤弁護士は説明する。

報道によれば、モームリは退職トラブルに関する交渉案件を弁護士に紹介し、その見返りとして紹介料を受け取っていたというLINEメッセージが明らかになっている。まさに「弁護士から紹介料をもらって、お客さんを紹介する」という違法行為の証拠となる内容だ。

しかし、仕事を紹介する代わりに紹介料を受け取ることは、他の業界では一般的に行われている。なぜ弁護士業界だけ厳しく規制されているのか。

「弁護士法の理念として、『法律の専門家でない人が、法律トラブルをお金儲けの道具にしてはいけない』といったものがあります」

利用者の視点では、弁護士を自由に選ぶ機会が失われてしまうこと、弁護士がお金儲けに腐心する可能性、紹介料を払うことで経済的に圧迫された弁護士の業務の質が低下する恐れなど、様々な懸念があるという。このようなモラルハザードを防ぐための規定だというわけだ。

一方で、「弁護士が広告会社にお金を払って宣伝してもらうことは禁止されていません。紹介料を払って紹介してもらった顧客と、有料広告を見てきた顧客とで違いはあるのか、見直しが必要なのではないか、という指摘もある規定です」とその曖昧さも指摘する。

◆実刑はあるのか?法人も逃げられない“両罰規定”の怖さ

弁護士法72条違反に対しては「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」が定められている。モームリの事案ではどの程度の刑事罰が想定されるのだろうか。

「判断は難しいですね。いわゆる『非弁行為』の中には、弁護士と業者が顧客を食い物にしようと結託するケースや、あたかも弁護士が対応しているかのように見せかけて実際には弁護士が業務を行っていないケースなど、詐欺的な事案が少なくありません。これらの消費者被害ともいえる事案に比べれば、顧客を直接騙しているわけではないため、悪質性は低いという評価もあり得るでしょう」

しかし同時に、「認知度や規模感は前例がないスケールであり、社会的影響力という点では悪質性が高くなる要素にもなります」と述べ、今後の判断に注目したいとしている。

さらに社長個人だけでなく、法人としての刑事責任についても「ほぼ間違いなく法人も刑事責任を問われるでしょう」と南澤弁護士は断言する。

「弁護士法違反には『両罰規定』が置かれており、『行為者である社長・従業員個人』だけでなく、その行為が法人の業務として行われていたと評価されれば、法人自体も罰金刑の対象となり得ます。報道されているメッセージの証拠からすると、代表個人というよりは、従業員を手足として紹介を行わせていた形跡があり、まさしくこの『両罰規定』に該当する事案です」


配信元: 日刊SPA!

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