◆利用者は無傷? 企業は訴えられる?“巻き添え”の線引き
今回の事件が利用者や元勤務先にまで影響が及ぶのだろうか。「今回違法とされているのは、あくまで『弁護士から紹介料を受け取っていた』という部分であり、モームリの退職代行事業全体が違法と判断されたわけではありません。退職の意思伝達自体が無効ということにもならないでしょう」
もちろん今後の捜査によって余罪が判明する可能性はあるが、退職自体の有効性には争う余地はなく、企業側から民事訴訟を起こされるリスクは低いとみている。
また、退職代行を利用した労働者側についても、「利用者視点では、紹介料の受け渡しの事実は知りようがありません。仮に紹介された弁護士を利用していたとしても、今回の弁護士法違反に関して利用者が責任を問われる可能性は非常に低いでしょう」と述べ、利用者の法的責任は問われないとの見解を示した。
◆退職代行が必ず“グレーゾーン”に足を踏み入れる理由
退職代行業界では「退職の意思伝達」と「法律事務」の線引きが曖昧だが、なぜこのような状況が生まれるのだろうか。「退職代行業者はあくまで一方的に本人の意思伝達をするだけ、という建前にのっとっています。例えるなら、業者が伝書鳩のように、意思を持たずに本人と会社を媒介しているようなイメージです」
しかし現実的には、退職代行業者を使わざるを得ない状況は、辞めたい従業員と会社との間で確執や軋轢があるケースが多い。会社によっては「働いた分の給与も払わない」など、法律上認められない主張をすることもあるという。
「こういった話が出たときに、退職者からすると、適切に反論をしてもらいたいところですが、退職代行業者がそれをしてしまうと『非弁行為』そのものに該当してしまいます。このようなケースでスムーズに弁護士が対応できるということは、退職者側にとっても業者側にとっても望ましいことではあります。しかし、この前提に『お金を儲けたい』というモームリ側の意図が加わったことで、今回のような法律違反が生じてしまったみています」

