◆なぜ“見せしめ逮捕”されたのか
モームリの代表は以前から「サービスの危うさ」について語っていたが、これは刑事責任の判断に影響するのだろうか。南澤弁護士は「今回の弁護士法違反の問題に関しては、退職代行サービス自体の危険性というよりは、弁護士法への無理解やお金儲けを重視した企業体質の問題です。モームリ代表が退職代行サービスの危うさを自覚していたとしても、それでお金儲けに走ったという点では擁護できないでしょう」と述べる。
「表向きは理想的なことを吹聴しながら、裏では遵法意識がなかったという倫理観のなさは、むしろ不利に評価される要因ではないでしょうか。実際、企業の不祥事は在宅で捜査が進むことが多い中、『逮捕』という強硬手段が取られたことは、見せしめ的な意図があったのではないかと思われます」
◆退職は誰に頼むべきなのか──事件が突きつけた“正解”
最後に南澤弁護士は、この事件の本質と社会的影響についてこう総括する。「退職にはトラブルが付き物である以上、弁護士が責任をもって対応することが退職する人にとってベストです。特に、平然と労働法規違反の主張をするようなブラック企業相手の退職では、弁護士資格が退職者にとって心強い盾となることは間違いありません。一方で、弁護士に頼むほどのお金がない、敷居が高いという利用者の感覚もあるでしょう。一円でも安く退職したいというニーズがあることも事実です」
このようなズレが、モームリのような薄利多売型のビジネスやモラルハザードを生じさせてしまったというのが、今回の事件の背景だという。
「弁護士の立場としては、退職で悩む人たちに対して、しっかりと弁護士が対応することの社会的意義や、気軽に依頼できて安心できる存在だというアピールをすることが課題だと感じます」
この事件は、退職代行というサービスそのものではなく、法律トラブルを薄利多売で回すビジネスモデルへの警告となった。そして同時に、弁護士業界にとっても、一般市民にとって身近で頼りやすい存在になることの重要性を改めて突きつけた事件といえるだろう。
<取材・文/日刊SPA!取材班>
【南澤毅吾】
アディーレ法律事務所。「パチスロで学費を稼ぎ、弁護士になった男」という異色の経歴を持つ。司法修習時代は、精神医療センターにて、ギャンブルを含む依存症問題について研修を受けた経験があり、一般市民の悩みに寄り添った、庶民派の弁護士を志す。アディーレ法律事務所・北千住支店長として対応した法律相談数は、累計数千件に及び、多様な一般民事分野の処理経験を経て、現在は交通事故部門の責任者となる。

