◆男子校で醸成された“メンタリティ”が女性との距離を遠ざける

そう語るのは、渡邊孝さん(仮名・51歳)。2001年まで都内でも有数の中高一貫の男子校“だった”早稲田実業校(2002年より共学)に通ったエリート。けして、モテなかったわけではない。
「早実は進学校だったけど、ガリ勉ってほどでもなく、当時は洒落た印象があったようです。在学中は学校名を言えば、中学1年生のころからどこの女子校ともすぐに合コンが組めましたし、何なら偏差値が低い女子校は話が合わないから避けるなど、選り好みしていたくらい(笑)。年に一度の文化祭には女子が受付に長蛇の列を作ってましたから、どのコが来るのか事前に把握して名前・電話番号をまとめた名簿をクラスで共有していました」
ただ、それで社会に出て結婚できるかどうかは別物だと渡邊さんは力説する。男子校で醸成されたメンタリティが女性との距離を遠ざけるのだという。
「共学なら授業も行事も一緒で、女子が“生活の一部”になりますよね。でも男子校では、それがすっぽり抜け落ちるんですよ……。僕らは合コンに文化祭と“出会い目的の場”でしか女性と顔を合わせないから、完全に“攻略対象”になっちゃう。恋愛対象か否かでしか女子を見れないので、良いなと思った瞬間にすっごいガッついて引かれてしまうんです」
そんな渡邊さんもいくつかの挫折を経て、ようやく就職後の33歳で彼女ができ、互いの両親に紹介し合うなど結婚目前までいった。だが37歳で破局してしまう。
「相手から『ずっと口説かれ続けているようで辛かった。対等に見られていない気がする』と振られました。食事をしたら椅子を引いてあげるとか、常に愛情表現を欠かさないとか、そんな振る舞いはできたけど、一緒に生活する相手として自然な対応ができなかったんです」
◆母の手厚いサポートで「決められない人間」に

「学生時代は保健体育のテストも常に満点でしたし、恋愛本も読み漁ってきました。情報収集だけは、ずっと得意。でも、いざ女性を前にするとテンパってしまう。先日はマッチングアプリで出会った女性とせっかくデートまでこぎつけたのに、事前に仕入れたラブブのネタを早口でまくしたてるやばいヤツになってました……」
この点は、前出の渡邊さんとも重なる“女性に対する不慣れ”だ。そして佐藤さんが問題だと感じているのは、恋愛経験の少なさそのものよりも、「選ぶこと」に慣れていない点だという。
「高偏差値の男子校って、母親のサポートがものすごく手厚い家庭が多いんです。受験はもちろん、生活の細かい部分まで親が管理してくれる。その環境で育つと、大事な決断を自分で下す経験が圧倒的に少なくなる。そんな僕らに、結婚相手を“自分で選べ”と言われても、正直かなりきつい。高校時代、デートに母親がついてきた同級生も実際にいました」
その結果、結婚に至るケースにも偏りが生まれる。
「稀に結婚できた友人もいますが、多くは大学でできた最初の彼女とそのまま結婚を決めてしまう。恋愛コンプレックスがあるから、『この人を逃したら一生独身だ』と思い込んでしまうんです。でも、『もっと他を見ればよかった』と愚痴る既婚者の話を、嫌というほど聞いてきました」
周囲を見渡せば未婚者が多数派。一方で、既婚者からは後悔の言葉が漏れてくる。その光景が、佐藤さんの決断をさらに先延ばしにしている。それでも、男子校という環境そのものを否定する気はない。
「生まれ変わっても、たぶんまた男子校を選ぶと思います。楽しかったという記憶はあるし、今の収入などを考えれば、きっと正しい。ただ、結婚できなかった理由を考えると、あの環境が与えた影響は大きかったですね」
これが共学だったならば、自然に女性との接触頻度も増えて、“母の呪縛”からも解かれたか――。

