じつは知らない? クリスマスローズのトリビア10|花びらじゃない? 毒? 長生き?

じつは知らない? クリスマスローズのトリビア10|花びらじゃない? 毒? 長生き?

⑦ なぜ、日本だけがここまでクリスマスローズを多様化できたのか?

答えはシンプルです。日本の育種は、「異質なもの」を切り捨てず、そこに可能性を見出してきたから。

異常の中に可能性を見出し続けた文化

クリスマスローズは、実生で育てると変異が出やすい植物です。その中には、「きれい」とは言いがたい、むしろ奇妙で、歪で、どこか異常にも見える花が現れることがあります。

クリスマスローズ
日本の育種家たちが生み出した多弁咲き品種。クリスマスローズの世界展より。

たとえば多弁咲き。その始まりは、今私たちが知っている整った豪華な姿とは程遠く、蜜腺や雄しべが変化した、違和感だらけの、不可思議な形でした。

多くの場合、こうした“異常”は淘汰され、忘れ去られてしまいます。けれど日本の育種家たちは、その異質な姿を失敗ではなく、「何かが起きているサイン」として受け止めました。なぜ、こうなったのか、ここからどんな可能性が広がるのか。

そうして残され、見守られ、世代を重ねるなかで、多弁というひとつの美のジャンルがゆっくりと形を整えていったのです。

「選抜」に時間をかけるという文化

日本の育種は、選び続けることに重きを置いてきました。数百、数千株を育て、数年かけて咲かせ、残すのは、ほんの数株。

この「時間×手間×忍耐」を惜しまない姿勢は、盆栽、朝顔、菊、サクラといった日本の伝統園芸と同じ地平にあります。

クリスマスローズもまた、何世代も見続け、問い続け、選び続ける「進化途中=無限の可能性を秘めた」植物として向き合われてきました。

人が支えることで、命は広がる

クリスマスローズ
毎年個性豊かな新しい品種が生まれる。クリスマスローズの世界展より。

多弁化したクリスマスローズは、自然受粉しにくく、野生では決して有利な存在ではありません。それでも、この花が消えず、むしろ豊かに広がってきたのは、育てたい、咲かせたい、美しいと感じた人の手があったから。

育種だけでは、花の文化は成り立ちません。育種・生産・流通・愛好家・市場。そのすべてが重なり合い、異質だったものが価値へと変わる。

その積み重ねの先に、日本のクリスマスローズは、世界でも例のない多様性を獲得しました。

⑧ クリスマスローズは「咲き進むと色が変わる」

品種によって違いはありますが、クリスマスローズは以下のように咲き進みます。

  • 開花直後→ 明るい・淡い・透明感のある色
  • 時間の経過とともに→ 色がのり、深みが増す(赤・紫・黒系は特に顕著)
  • さらに進むと→ 緑っぽく変化(グリーン化)→ 最終的には褪せた印象になる
咲き進んだクリスマスローズ
3月下旬から4月になると、雄しべや蜜腺が落ち、ガクは次第に薄緑色に変化する。

最終的な緑色は、老化ではなく役割の変化による自然な過程です。前述した通り、花に見える部分はガク。最初は受粉のための「花」として、その後は光合成を行う「葉に近い器官」となるため、クロロフィルが増加し緑化します。ガク自体は光合成を行い株自体に栄養を蓄えますが、そのままにしておくと種子をつけるために大きくエネルギーを消費するため、特に株が若い場合や体力を温存したい場合は、緑になる前に花茎の根元からカットしておくのがおすすめです。

⑨ 「レンテンローズ」の“レンテン”の意味

クリスマスローズ
anna.chikushi/Shutterstock.com

クリスマスローズはヨーロッパでは「レンテンローズ」とも呼ばれます。 レンテンとは、キリスト教の四旬節(復活祭前の40日間)を意味します。ヨーロッパでは、四旬節にあたる2〜3月に咲くクリスマスローズが多かったことから、これらをまとめて「Lenten Rose(四旬節のバラ)」と呼ぶようになりました。

ヘレボルス・ニゲル
雪の中に咲くヘレボルス・ニゲル。andrekoehn/Shutterstock.com

一方、クリスマスの頃に咲くのは、ニゲル(Helleborus niger)と呼ばれる原種。こちらは英語でも「Christmas Rose」と区別されています。現在、日本で親しまれている多くの園芸品種は、四旬節の時期に咲く系統が中心。そのため「レンテンローズ」という呼び名が、クリスマスローズ全体の通称として使われているのです。

⑩ 1株が「20年以上」生きることもある

クリスマスローズ
地植えのものは年数を経ると株が大きくなり、こぼれ種でも庭に増えていく。

クリスマスローズは、条件が合えば20年以上、なかには30年以上生きる株もあります。流行のように入れ替わる植物ではなく、同じ株が、同じ場所で、何度も冬を越え、何度も春を迎えます。それは、「育てた」というより、一緒に時間を過ごしてきたという感覚。クリスマスローズは、人生の時間を静かに共有する花なのです。

Credit 文&写真(クレジット記載以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!

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