◆少子高齢化はトイレにも。ロボット開発できれいを維持

例えば、「スマートSAマネジメントシステム」は、トイレの利用状況に加え、トイレットペーパーや水石鹸、除菌クリーナーの残量、さらには臭気や温湿度、CO2までセンサーで検知。利用状況はリアルタイムで共有され、最適かつ効率的な補充タイミングを導き出す。
そして、目下独自開発中なのが、「狭小部清掃ロボット」だ。設定時間になると充電ステーションから出動し、男子トイレの小便器下やその床を自動清掃する。そう、的を外したおしっこや勢いよく飛んだ飛沫で汚れたあの、箇所である。
「男子トイレの小便器の下は狭く、『エリアキャスト』と呼ぶ清掃スタッフが床にしゃがみ手鏡を使って手で掃除をしています。キャストの高齢化は進んでいますし、将来的には雇用の確保も難しくなる。そうした課題感から開発が始まりました」(NEXCO中日本・吉谷直人さん)
少子高齢化の波は、我々が望む「きれいなトイレ」の存続にも影響を及ぼす。
「トイレも“目的地”であってほしい。そのためには匂わず、清潔感安心感があることが大切です。現在のサービス水準は高めていく必要こそあれ、下げることはできないというのが我々のスタンスです」
人は一生のうち約3年をトイレで過ごすという。だからこそ、この小さな個室に、やさしさに導かれたテクノロジーが集まる。トイレのDX化は、必然だったのだ。
◆トイレは人を呼ぶ・トイレはおもてなし

使いやすく誰にでも使いやすい公共トイレをと、「倒れても押せるよう緊急ブザーを上下につける」「ペーパーホルダーを左右両側につける」「男性用トイレへのサニタリーボックス設置」といった基本マニュアルを作成。公共トイレの改修には会議のメンバーも参加し、「浦上駅前公衆トイレ」「長崎市庁舎のトイレ」は、日本トイレ協会の「JTAトイレ賞」を受賞している。市がトイレ施策に注力したそもそものきっかけは、市街地のにぎわい創出プロジェクトの一貫だという。
「街を歩いて回ってもらうにはトイレが必要。プロジェクトの軸のひとつにトイレを掲げたのです」(長崎市まちなか事業推進室)
活動を始めて15年。定量的な効果は出ていないが、「『どこにでも公衆トイレがあるね』『公衆トイレなのにくさくない』という声をいただいている」と、好評を得ている。みんなにやさしいトイレ会議の竹中晴美委員長はこう語る。
「トイレはお出かけ先の安心感そのものなんです。安心できれば、みんなが来てくれ、ひいては街の賑わいになる。ハイテクのトイレ、おしゃれなトイレもすごいし素晴らしい。でも、なにより大切なのはそこにやさしさがあるか。トイレは基本、愛なんです」
かの、ビル・ゲイツはこう語っている。”テクノロジーは、私たちが他者に対して持つ、生来の思いやりを解き放つ“。世界トイレ機関によれば、人は一生のうち約3年間をトイレで過ごすという。「いやいや、3年では足りない」という人も多いだろう。だからこそ、その空間に愛とやさしさ、思いやりに導かれたテクノロジーが注がれる。トイレのDX化の流れは必然なのかも、しれない。
取材・文/小山武蔵

