物価高が続くなか、あまりに安すぎる飲食店や小売店が、いま各地で静かに増えている。刺し身が驚くほど安い居酒屋、原価が合うとは思えない海鮮メニュー──その裏で起きているのは、単なる企業努力ではない。極限まで削られた仕入れコストの先に、違法行為やグレーゾーンが顔をのぞかせるケースも出始めているのだ。
昨年11月、東京・勝どきの人気居酒屋で起きた「魚のアラ窃盗事件」は、その象徴だった。“安さ”を追い求めた末に何が起きているのか──激安の裏側に潜む危うい実態を追った。
◆行きすぎたコスト削減の末に…
![物価高なのに[異様に安い店]を直撃![激安]の裏側](https://assets.mama.aacdn.jp/contents/210/2026/2/1770596314143_5su4601jh9.jpg?maxwidth=800)
東京・勝どきの居酒屋「楽笑」は、刺し身など海鮮が安くておいしいと評判の店。だが、同店の中国籍女性が豊洲市場から「魚のアラ」を盗んだ容疑で逮捕されたのだ。アラは「カマ焼きにして客に提供していた」という。まさに禁じ手のコストカットだが、豊洲市場は関係者以外立ち入り禁止。仲卸フロアへの入り口には警備員が常駐する。果たして、そんな“仕入れ”が可能なのか。水産物の流通に詳しい日刊食料新聞の木村岳氏は、こう明かす。
「魚を買いにきたふうを装えば入れちゃいます。実際、仲卸のなかには顔なじみの一般客がいるような店もある。市場内に入ってしまえば、アラが捨てられる廃棄物集積場は施錠されていないので、持ち去ることは可能でしょう」
◆「今はちゃんと買って仕入れている」
記者は「楽笑」の味と価格を確かめるため、勝どきを訪れた。平日の19時半頃だったが8割方席は埋まっており、入店後も客が途絶えず、事件の後も人気は衰えていない。メニューを見ると、シマアジ刺しが800円、大盛りネギトロが650円、生カキは1個300円と、確かに海鮮が安い。ボリュームも多く、刺し盛りを頼むと通常の居酒屋の3~4人前はあろうかと思われる立派な舟盛りが、2300円と激安だ。鮮度に不安を感じながら口にすると、歯応えもよく旨い! そして盗んだアラを材料にしていたというカマ焼き(鮭)も300円と安いが、普通においしかった。
店員に話を聞くと、「カマも、今はちゃんと買って仕入れている。やっぱり定番だからメニューから外してはいません。もともとウチには団体客がついていたけど、あの一件以来、他の店に流れてしまった。団体客は、なかの一人が反対すれば、みんな店に来ない。結果的に売り上げは落ちてしまってます」

