
◆あまり見かけない検査項目も、状況によっては有用
人間ドックのオプションとしては、大腸がん対策として大腸内視鏡(大腸カメラ)が最も推奨されるほか、体内をくまなく検査する腹部超音波(エコー)や胸部CTも一般に比較的よく知られている。それとは逆に、通常あまり見かけないような「レア物」受診オプションもあるのだろうか。
「レア物≒『どこでもやっていない』ということは、裏を返せば『医学的根拠が乏しい』場合もあるので注意しましょう。ここでは医学的に有用性が高いものの、設備や手間の問題で導入施設が限られている『隠れた名検査』をご紹介します」
ここで石岡院長が例示したオプションは以下のようなものだ。
(1)DWIBS(ドゥイブス)検査(全身がん検査)
MRIを使って全身のがんを探す検査。「PET検査」と似ているが、被曝がなく、注射(造影剤)も原則不要なのが最大の特徴。また、PET検査が苦手とする泌尿器系や前立腺がんの発見に優れている。
(2)大腸CT検査
「大腸カメラはどうしても怖い」という方向け。CT撮影データを3D処理し、仮想的に大腸内を観察する。(※ポリープ切除はできない)
(3)MRA(脳血管撮影)
脳の「血管」だけを立体的に映し出す。くも膜下出血の原因となる「未破裂脳動脈瘤」を見つけるには必須。
(4)骨密度検査(DEXA法)
微量なX線を使って、「腰椎(腰の骨)」と「大腿骨近位部(足の付け根の骨)」の密度を直接測定する世界標準(ゴールドスタンダード)の検査。
(5)ABI検査(足関節上腕血圧比)
手と足の血圧を同時に測るだけで、「血管の詰まり具合」や「血管年齢」が分かる。動脈硬化の進行度を知るシンプルな検査です。
(6)アルコール遺伝子検査
お酒を分解する酵素のタイプを調べる。自分の体質や肝臓がん・食道がんのリスクを知り、上手にお酒と付き合うためのヒントを得られる。
人間ドック受診を検討中の医療機関で、こうしたオプションが設定されていたら要注目である。身体の不調や悩みなどと勘案し、より精密な診断結果が欲しいなら選択しても良いだろう。
◆バリウム検査よりも胃カメラの方が推奨
ところで、人間ドックはコースやオプションにバリウム検査(胃部X線検査)が含まれていることも少なくない。会社の健康診断などに取り入れられていることも多いが、このバリウム検査が「ツライ」「苦手」という読者も多いのではないだろうか。一度受けたことがある人は思い返してほしい。バリウムと一緒に発泡剤を飲まされ、ゲップをこらえたまま四方へ傾斜する台に必死でしがみ付き、バリウムとガスで張り詰めて苦しい腹部を機械でこね回され……。「私たち消化器内科医で、自分の検診にバリウムを選ぶ人間は、まず皆無です。巷では『負担が大きいし、受けても無意味』という意見もあるようですが、これは医学的見地から見ても、かなり的を射ていますね」
医学界で多くの経験・知見を重ねてきた石岡院長がここまで語るのには、理由がある。バリウムは他検査と比べて、決定的に検査精度の差があるのだ。海外の事例だが、韓国で25万人を対象に行われた調査によると、5年間に1度でも胃カメラ検査を受けた人は、胃がん死亡率が47%減少。対してバリウム検査を受けた人の胃がん死亡率減はわずか2%だったという。
「早期胃がんは、わずかな色変(赤み)として現れます。影絵しか見ないバリウムでは見逃されやすく、発見できても『影が映るほど病状が進行してから』になりがちです。日本は非常に検査技術の高い技師が多いので、多少は成績が上がるでしょうが、それでも『カメラで47%減に対して、バリウムはわずか2%減』という圧倒的な差は無視できません。」
また、石岡院長は「現代人の体内検査は胃袋だけ見ても不十分」と指摘する。現代はピロリ菌感染者が減少し、昔ながらの胃がんリスクは減少傾向の一方、食の欧米化や逆流性食道炎の増加で食道がん・十二指腸がんのリスクが上がっているのだ。
「バリウム検査はあくまで胃だけ見る検査です。胃カメラのように、口から胃の経路にある喉と食道、胃のすぐ先にある十二指腸までくまなく観察することはできません。胃しか見ないバリウム検査は、多角的なリスクケアが必要な現代のニーズに合わないのです」
このため、バリウムと胃カメラを同時に受けるメリットも無い。厚生労働省の指針ではバリウムが「毎年受診」、胃カメラなら「2年に1回」が推奨されているが、食道がんリスクの高まる40代ならば、守備範囲の広い胃カメラの方が適切である。

