ガタガタの文字で綴られた「つらい、ここから出して」…迎えに行った娘、絶句。年金17万円・87歳母が〈レクリエーションが充実した老人ホーム〉で穏やかな余生を跡形もなく踏みにじられたワケ【FPが解説】

ガタガタの文字で綴られた「つらい、ここから出して」…迎えに行った娘、絶句。年金17万円・87歳母が〈レクリエーションが充実した老人ホーム〉で穏やかな余生を跡形もなく踏みにじられたワケ【FPが解説】

安心・安全の施設のはずが…

要支援認定を受けている母のため、Aさんが選んだのは、地域の訪問介護等の介護サービスを利用できる「住宅型有料老人ホーム」でした。決めては、入居者のレクリエーションやイベントが充実していること。一人暮らしの長かった母が、寂しくないように配慮したためです。

しかし、よかれと思って選んだ環境が、まさか仇になるとは思いもしません。入居からしばらく経ったある日、Aさんのもとに一通の手紙が届きます。そこには、ガタガタと震えるような文字で、こう記されていました。

「つらい、ここから出して」

慌てて施設へ駆けつけると、母は昼間にもかかわらず部屋に閉じこもって、ベッドの中で丸くなっていました。身体の具合が悪いのかと聞いても、「悪くない」と返事が来るだけ。時間を掛けて理由を問うと、実は、母は施設内で陰湿ないじめに遭っていたことがわかり、Aさんは言葉を失います。

老人ホームは、年齢も性別も、生きてきた環境も異なる数十人の高齢者が集団生活を送る場所。一口に高齢者といいますが、60代の人から100歳の人まで年齢の幅は広いです。そこには、相性や人間関係によってトラブルが発生することもあります。

Aさんの母を標的にしたのは、入居歴が長く、入居者グループのリーダー的存在だったBさんという女性でした。きっかけは母とBさん2人のあいだでのちょっとした口論。しかしそれを機にBさんは、ほかの入居者にAさんの母の陰口をいいふらし、仲間外れにしました。次第にエスカレートしていったのか、Bさんだけでなく、Aさんの母を無視したり悪口をいったりする人がだんだん増え、母は限界を迎えたようです。

「終の棲家」のトラブルを防ぐために

老人ホームもたくさんの高齢者が入居しているので、人間関係によるトラブルもあるでしょう。入居者同士や職員等の人間関係が悪化すると、暴言や暴力によるいじめ、ときには恋愛トラブルになることも。

もし人間関係が原因で短期間での退去を余儀なくされても、支払った入居一時金や初期費用はほとんど戻ってこないケースもあります。Aさんのように、引きこもりの息子を支えるために資産を残さなければならない家庭にとって、老後資金計画に与える影響は甚大です。

私たちはつい「費用が高い施設なら安心だろう」と考えがちですが、生活の質を決定づけるのは見た目ではなく、目に見えない「人間関係」です。どんなに高額な費用を払っても、そこで親が孤立してしまえば、それは決して「生きたお金の使い方」とはいえません。

こうしたミスマッチを防ぐために、契約前の「体験入居」は省略しないようにしましょう。手間・時間・費用がかかったとしても、将来の数百万円がふいになるリスクを回避するための必要な経費と割り切り、必ず現地の空気を肌で感じてから決断することが、資産と親を守る一手となります。

Aさんの母は、「娘に迷惑をかけてしまう」と、しばらくのあいだ我慢し続けたようです。入居後のトラブルは大きくなる前に状況に応じて職員や職員の上司に相談する、家族に相談するなど、定期的に訪問等して話を聞いてあげられる環境をつくることも必要でしょう。老人ホームに入居したから「絶対安心」とは限らないようです。

〈参考〉

厚生労働省:介護を受けながら暮らす高齢者向け住まいについて
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000038005_1.pdf

厚生労働省:有料⽼⼈ホームの現状と課題について
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001592455.pdf

厚生労働省:別表有料老人ホームの類型
https://www.mhlw.go.jp/content/001347959.pdf

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

共同代表

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