
文具のとびら編集部
本サイト編集長の文具王・高畑正幸さん、イロモノ文具コレクター・きだてたくさん、ブンボーグA・他故壁氏さんの3人による文具トークライブユニット「ブング・ジャム」が、気になる最新文房具を独自の視点から切り込んでいく「月刊ブング・ジャム」。今回は、ブング・ジャムのみなさんにおすすめの手帳グッズを紹介してもらいました。
第3回目はきだてさんおすすめのビバリーの「TaleGardensふせん」です。
(写真右からきだてさん、高畑編集長、他故さん)*2025年8月9日撮影
*鼎談は2025年8月30日にリモートで行われました。
手帳も“一汁一菜”
「TaleGardensふせん」(ビバリー) *関連記事
【きだて】去年もね、手帳の話が出た時に、手帳できるだけ書かなくて済むようにとかそういう話をしてたわけで。去年どころか、ここ 2、3 年多分ずっとその話してるよね。
【他故】してるね(笑)。
【高畑】何年か前は、でかいシールを貼ろうっていう話とかしてた。
【きだて】そう。それで今年は、でかいふせんを貼ろうっていう。
【他故】おおっ(笑)。
【きだて】ビバリーの「TaleGardensふせん」というやつで、お花畑のふせん。貼るとこんな感じで。
【高畑】上にはみ出すタイプね。
【きだて】中に貼ってもいいし、はみ出してインデックスとして使ってもいいんだけど、はみ出すとこういう風にお花畑になってキレイだよっていう。
――手帳から花が生えてるみたいな。
【きだて】そうそう、お花畑のようになるっていうね。それでもいいし、中に貼っちゃえば、当然この面積だけもう書かずに済むわけですよ。
【高畑】はいはい。
【きだて】やっぱ、でかい貼り物は手帳の正義だなっていう。
【他故】うんうん。
【きだて】手帳とかノートとかって、紙面の狭い面積の中にグリッドとか罫線みたいに整わせるためのルール決めがされているでしょ。俺は、そんな中に自分の汚い字が入り込むのがちょっとイヤで。
【他故】ほぉ(笑)。
【きだて】整った調和のある中に、なんで俺の字で乱さなきゃいけないんだみたいな。
【高畑】なるほど。
【きだて】いや分かるよ。あなた方のような人たちは、自分の字でそういうルールをかき乱して、占拠していくのが楽しいんだろう、おそらく。
(一同爆笑)
【きだて】調和を乱して、自分のルールを押し付けるのが好きなんだろ、あなた方は。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】僕は、平和主義なので、侵略的なことはしたくない。キレイなところはキレイなままでいたい。
【高畑】なるほど(笑)。
【きだて】あなた方は、自分の字でびっしり埋め尽くしたいわけでしょ。
【高畑】どっちかっていうとそうだね。
【他故】まあ、そうだね。
【きだて】やっぱね、とにかく自分の字が病的なまでに嫌なんだろうね。かといってそこに何も埋めないなら意味は無いし本末転倒だし。なので、最低限の自分の字と、あとはその空間のルールから逸脱しないものを貼っていくというのが、結局のところ一番調和のある解決法じゃないかな、というのを思ってるわけでさ。前にも紹介したキングジムの手帳用のでっかいシールとか、今回のふせんもそういうためのものだよね。今回のこの「TaleGardensふせん」はシーズンごとのお花があるので、手帳のページのその時期に沿ったもの貼っていけば、もうそれだけでなんか満足感あるじゃない。
【他故】ああ、それは分かるね。
【きだて】下手すると、M5の手帳ぐらいだとこれ1枚貼ったらあとはもう2、3書けば大体埋まっちゃうぐらいのサイズ感なわけですよ。それならまあ1日1ページでも書けるじゃんっていう。そういう意味で、みんなもうちょっとでかい貼り物を使っていこうよっていうのは延々と言っていきたいし。あとね、大きいふせんって自分でも作れるよっていうのも言っていきたい。
【他故】自分で?
【きだて】だって、再はく離できる貼ってはがせるのりがすでにあるわけじゃん。ということは、ふせんとか貼ってはがせるシールは自分で作れるわけですよ。プリンターだの何だので。
【高畑】まあ、そうだね。
【きだて】実際に、俺は以前「デイリーポータル」でオリジナルのふせんを作るという記事を書いたんだけど、例えば脚のかたちをしたふせんを2枚本の上に出したら『犬神家の一族』になるよ、みたいなことをやってて。この花のふせんって、突き詰めたらそれと同じじゃん。
【高畑】同じだね(笑)。
【きだて】だからアイデア次第でなんぼでも貼り物は作れるし、自分で作ればサイズなんか自由自在なわけじゃない。
【他故】そうだね。
【高畑】だから、絵が描ける人はいいけど、そうじゃなくても別にどっかから切り抜きを持ってきてもいいし、プリントアウトでもいいしってことだね。
【きだて】うん。それこそ自分個人で使用する範囲内なんだから、好きなキャラクターの画像をプリントアウトして貼っちゃっていいわけじゃん。
【高畑】そうだね。
【きだて】それを販売さえしなければ別に咎められる筋合いはないので。
【他故】まあ、自分のノートに貼る分にはいいよね。
【きだて】それで、例えば自分の日記に合わせて何か絵柄を貼るとか、そういうのをやっていけばコラージュ的に楽しいわけじゃん。そういう手帳の楽しみ方を、「もうちょっと簡単に楽しめるよ」っていうような提案していった方がいいのかなと思って。どうしてもコラージュ手帳って、すごいハイテクニックな一つとしてあげられがちじゃない。
【他故】ああ、分かる分かる。
【高畑】確かにね。もうちょっと楽なやつ。
【きだて】もうちょっアイデア次第で楽にやっちゃえばいいじゃんっていう。
【高畑】多分そのセンスもね、雑誌とかお菓子の箱とかそういうのを上手く切り出して、上手に作れますよっていうのはセンスが要るかもしれないけど、そのビバリーのふせんだったら、そういうのがなくても貼っていけばそれっぽくなるのがいいところかな。
【きだて】そうそう。そういうお任せで全然いいし。もうちょっと、意味のないものを貼ってこうぜっていう。
【他故】意味のないもの?
【きだて】いやほら文具王とか他故さんって、旅行へ行った時の切符を貼ったりとか、チラシを貼ったりとか、そういう意味のあるものを貼っていくじゃない。
【高畑】その意味のある・なしもそうだけどさ、俺が前から言ってる紙くず日記とかって、別に意味はないけど、その日の手元にあるものをとりあえず切って貼ると、何かそれっぽく見える。
【きだて】おっ、それよ、それ。
【高畑】意味がないんだけど、意味があるように見える。あとはもう本当に何でもいいから全部貼るみたいな。何が貼ってあるのをよく見ると、別にどうでもいいゴミ袋とかさ、お弁当のシールとか、それ用に何か選んだりしてないけど、それでもいいよねって思うので。きだてさんが言うみたいに、今日のページの余ったところに、別に意味はないけど、貼るみたいなのでもいい。
【きだて】見かけた紙を1枚ペタッと貼って、「今日見かけた紙はこんなんで、こういうところで拾ってきたやつ」とかそういうコメントつけるだけでももう日記じゃん。
【他故】そうだね。
【きだて】そういうやり方でもいいじゃん。そういう手帳の使い方なら、しんどくないのかなと思うね。
【高畑】そうだね。続かないところを無理して難しいことをするのは。毎年手帳の話になると大体出てくるのが、「私は手帳が上手に使いこなせません。どうしたらいいですか」みたいな。
【きだて】それ絶対出るよね。
【高畑】そいうのが出てくるし、「それがうまく続かないんです。どうしたらいいですか?」とか、「何を書いていいか分かりません。どうしたらいいですか?」っていう人が結構いっぱいいるので、手帳のシュールレアリストとしてはね、特に意味はないが、手術台の上にコウモリ傘のシールを貼ればいいわけだよ。
【きだて】ミシンとコウモリ傘のシールとかね。
【高畑】そうそう、それでそれでいいわけだよ。
【きだて】なんかね、結局のところ、世の中に素敵な手帳の作例があふれ過ぎてるのが悪いんですよ。
【高畑】素敵な手帳の人っていっぱいいるじゃないですか。そういう人がInstagramとかにすごいアップしてるから、確かにそれはそうかもしれないね。
【きだて】それを先に見ちゃうと、萎縮しちゃうじゃん。で「手帳が書けません」になっちゃうわけで。
【高畑】博物館のチラシもらってウサギのはく製とかが印刷されてるやつを切り取って貼ってたら、いつの間にかヤン・シュヴァンクマイエルになるとか、独自の何か違う世界に行ってしまう人とか。
【きだて】ははは(笑)。
【高畑】確かに、無理に文字を書くていうことは、字に自信がないのも含めてだと思うけど、字をいっぱい書くのが正義ではないっていうのはあるから。
【他故】うん、それはそうだ。
【きだて】とはいえ、自分で手帳を書いてみようっていう時点で、紙が好きだったりとか、手帳のしつらえ自体が好きだったりとか、字を書くのが好きだったりとか、そういうのが好きっていう思いはあるんでしょ。だったら、それを嫌いになってほしくないなー、とは思うわけさ。
【高畑】なるほど。
【きだて】ランニングしてる人が世界陸上を見て「人間って100メートルを10秒以下で走れるんですね。でも私には無理です」って走るのやめちゃうの、明らかに違うじゃん。
【高畑】趣味で走るのはまた別として走ろうよというね。
【きだて】走らなくても、2㎞をそれこそ2時間、3時間かけてポテポテ歩くでも全然いいわけじゃない。手帳を書くのもおんなじ次元の話だと思うんだ。
【高畑】なるほどね。
【きだて】なので、手帳を楽にする方法をいろいろと考えることで、自分のできるところの境界線が見えてくるんじゃないかしら、と。
【高畑】そうだね。きだてさんが言うみたいな頑張らない手帳がもうちょっと表に出てきてくれると、みんな頑張らなくていいのかもしれないけど。今は、超絶上手い人がSNSでバズりがちだから目に入るよね。
【きだて】それに対して、自分の手帳が恥ずかしいとか思っちゃったら、やっぱりダメじゃない。もったいないじゃない。
【他故】それは良くないね。
【きだて】それで見栄えを良くしていきたいなら、シール貼ってきゃいいし、書くことないんだったら、さっきの文具王みたいな感じで見つけた紙でも貼っていけばいいし。それにコメントを書き込んで日記とするみたいでもいいし。スケジュールだけ管理するんじゃなくて、そういうのも全然いいわけじゃない。書くことができれば。
【高畑】スケジュール管理するのも、Googleとかネットでよくなっちゃってたりするじゃん。予定は機械的に書けたけど、それもあんまり書かないとなってしまうと、「じゃあ何書こうか」ってなっちゃうので、毎日日課としてシールを貼ってくれればいいと思うし。頑張らない側の手帳集みたいなのが流行ってもいいよね。
【きだて】この鼎談が出るのは9月でしょ?
――9月の終わりぐらいですね。
【高畑】ちょうどこれから、手帳も買わなきゃいけないとかさ、探しに行こうとかいう人が出てくるから。
【きだて】そういう時期じゃん。だから、無理な人はもう最初から手帳と一緒に貼るものを買おうよっていう。
【他故】それで全然いいよね。
【高畑】スタンプとかもあるしな。
【きだて】そうそう。
【高畑】とか言いながら、ここに貼ってあったシールを今はがしてこっちに貼り付けたんだけど、特に意味はないです。俺も、きだてさんが言ってることに同意ですよ。
【他故】うん、分かる分かる。
【高畑】そのビバリーのふせんもそうだけど、それ自体がキレイでかわいいじゃない。自分がかわいいって思ってるものを持ってくるだけでいいよね。
【きだて】「本当にそれでいいんだよ」っていうのを肯定したいんだよね。
【高畑】まあ、そうだね。
【きだて】「やっぱり手書きじゃないとダメ」だとか、そういう呪いにかかってる人たちも相当多そうなので。
【他故】ああ、別にいいいのにね。
【高畑】毎朝、宮沢賢治を書くとかっていうのは、なかなかできなかったりするわけだよ【きだて】やっぱね、手帳界の土井善晴みたいな人がいないと。
【高畑】そう、土井善晴だよ。
【他故】ははは(笑)。
【きだて】「一汁一菜でええんやで」みたいな。
【高畑】そうそう、「味噌汁さえあればいいんですよ」っていう。味噌汁に何でもいいから入れて、あとご飯と漬物なんかがあればそれで十分ですよっていう話だね。
【きだて】だから、きだ善晴が「シールと2、3行でええんやで」っていう(笑)。
【他故】ははは、きだ善晴(笑)。
【高畑】それはいいかもね。きだてさんいいこと言うね。多分さ、日本のお弁当ってすごいんだよ。お母さんが作るお弁当がすごくてさ、海外の動画とか見てると「お弁当だよ」って言ってタッパーにバナナとリンゴが入ってるとかが当たり前なのね。あとパンとチーズだけで食べてる。それが普通なんだよ。
【他故】あるある。
【高畑】日本のお弁当だけじゃん、開けると中がもう何か絵に描いたような、ご飯があってふりかけがあって、ハンバーグとたこさんウインナーとあって、いろどりにブロッコリーとプチトマトが入っててみたいな。あそこまでやんなきゃいけないって思うとさ、お母さん業は死ぬほど大変じゃんって思うんだけど、そういうのじゃなくていいよね。
【きだて】そういうのをやりたいなら、「じゃあ冷凍食品いっぱい使えばええんやで」になるしね。
【他故】そうそう。
【高畑】だから、手帳と弁当箱は似てるなってちょっと今思ったの。中をキレイに埋めたいっていう。それがどんどんエスカレートしていって、SNSでちょっとした競争になってしまうのは、お弁当の写真を SNSで競い合ってるのと、手帳の中身をキレイに書くのって似てるなってちょっと思って。
【きだて】似てるね。スカスカだとちょっと恐怖心を感じるところまで一緒だろうね。
【他故】ああ、そうか。
【高畑】お弁当とかだったらさ、子どもから「友達のはかわいいのに」とか言われるかもしれないけどさ。でも、手帳は自分用だから、自分の割り切りで「いやそうじゃなくてもいいよね」っていって自分で楽しむみたいな。
【きだて】そうそう。
【他故】それがいいね。
【高畑】その「きだ善晴」はいいんじゃないですか。シールだけじゃなくていろんな考え方が多分あると思うので、きだ善晴のいろんなメソッドを、「これでいいんやで」っていう手帳の話を秋頃にきだてさんがやるといいんじゃないのかな。
【他故】また新しい「道」ができたよ(笑)。
【高畑】だって、みんなしんどいんだよ。手帳を埋めるのがしんどい人は本当にいっぱいいるんだと思います。
【他故】分かる分かる、いるいる。
【きだて】しかも、それは毎日のことなわけじゃない。やっぱり、それはしんどいのが積み重なるでしょう。
【高畑】そうかもしれない。かと言って、じゃあ手帳をやめればいいのかっていうと、そこは続けてほしい面もあるじゃない。手帳は手帳で面白いところも色々あるから。美味しいところは楽しみながら、でも無理はしなくていいですよっていう。
【きだて】だって、手帳好きだから書き始めてるんだろうし、そこでやめちゃうのはもったいないじゃない。
【他故】それはそう。
【きだて】だからメーカーもね、もうちょっとお弁当における冷凍食品みたいなものをもっといっぱい出してほしいわけですよ。スタンプをもっと柄でかくして埋められるようにしてとかさ。
【高畑】でも、昔に比べたら随分増えたと思うよ。
【きだて】随分増えたね。いい傾向ですよ。
【高畑】そう思うよ。だから多分、みんなそうなんだろうと思う。
【きだて】ねえ。
【高畑】何か、きだてさんの新しい家元ビジネスがね。
【他故】また始まった(笑)。
【きだて】どうせやっても儲からないやつだろうなっていうのが見えるから、もう嫌だ(苦笑)。
――まあ、手帳でも 一汁一菜ということですね。
【高畑】そうだね。そこを何かね。
【他故】いいね。
【きだて】結局、楽しようって話をしてるだけだから、あんまり膨らまないんだよな。
【他故】それで十分でしょ?
【高畑】俺的には手帳が、日本のお弁当箱のあの過熱っぷりみたいなのとちょっと近いような気がして。で、さっききだてさんが言ってた冷凍食品みたいな話で、多分シールって冷凍食品なんだよね。最近だと、レンジにも入れないで凍ったまま弁当箱に入れとけばいいやつとかあったりするじゃん。
【他故】ああ、あるある。
【高畑】ああいう感じのところで、上手いことそういう商品が出てくると、それはそれでいいんだよね。なるほどね。
――きだてさんは、その手帳一汁一菜論的な感じで何か書けそうですけどね。
【高畑】秋頃に何かさらっと1本書くといいかもしれないよ。
【きだて】そうだね。
【高畑】舘神龍彦さんとかが言う手帳論も全然アリなんだけど、また違ってて面白いかな。まあ、いろんなのがあっていいと思うけど、正直、俺みたいにレーザーカッターで自作するとかいうのは全然普通じゃないじゃない。普通に手帳を楽しんでいるというには、ちょっと過剰過ぎる話だと思うよ。
【きだて】当たり前だよ(笑)。
【他故】ははは(笑)。
【高畑】ブング・ジャムの中には、あっちこっちに偏った極端な例がいくつかあるんだけど、読者の人はそれぞれ好きなところを取って楽しんでくれたらいいかな。
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