プロ経営者の成功と失敗を分けるもの
ある製造業企業で、創業者の後継として社長に就任した経営幹部が、短期間でCOOに役割を変更する人事が行われた事例があります。本人は、複数事業を統括しながらトップとして判断する難しさや、企業固有の文化への理解が十分でなかった点を振り返っていました。
そして、「チームの意識改革をして結果を出したい、経営においては努力の過程よりも結果が評価されるべきであり、成果によって組織や周囲から認められる状態を目指したい」という趣旨の発言をしていました。
しかし、この発言には違和感を感じざるを得ませんでした。成功の鍵は、自分のバリューアップよりも、自社・事業・従業員たちの社会的価値向上を大切にすること、また、自分が認められたい思いよりも、事業・従業員たちの成功が第1であるというマインドで仕切り直せるか否かだからです。
その後、この幹部は役割変更から数ヵ月で同社を退任しています。この事例は、後継経営者に求められる経営力や、企業の特性への適応が重要であることを示す一例といえます。
ここで取り上げた論点は、経営者・役員クラスはもちろん、事業責任者やCXO候補として転職を考えるすべてのエグゼクティブに共通するテーマです。
転職は、キャリアを伸ばすための選択であると同時に、自分の価値観や視座が厳しく問われる場でもあります。自分のことよりも、「事業と組織にどんな価値を残したいのか」を本気で考え、向き合えるかどうか。それが、転職後の成否を静かに、しかし確実に分けていくでしょう。
井上 和幸
株式会社 経営者JP
代表取締役社長・CEO
