妻に話しかけるときは「ごめんなさい」から入る…妻の「フキハラ」に怯える50代男性の“後悔の日々”【ルポ】

妻に話しかけるときは「ごめんなさい」から入る…妻の「フキハラ」に怯える50代男性の“後悔の日々”【ルポ】

フキハラ(不機嫌ハラスメント)とは言葉のとおり、不機嫌な態度や言動を意図的または無意識にぶつけることで、相手に精神的な苦痛や圧力を与える行為を指します。この「フキハラ」について、配偶者からの被害に悩まされている人も少なくないようです。朝日新聞取材班による著書『ルポ 熟年離婚』(朝日新聞出版)より、年上妻のフキハラに怯える50代夫の事例を紹介します。

毎日浴びせられるため息「妻が不機嫌で…」 悩み語れない夫の世間体

物音を立てたら、妻に舌打ちされました

四国地方の50代男性は、年上の妻と職場の飲み会で出会った。四半世紀ほど前のことだ。大きな声でハキハキと話し、しっかりしているところに好感を持った。つきあって1年ほどで結婚し、特に問題もないように思えた。

だが数年後、妻の態度が目に見えてとげとげしくなった。原因に心当たりはあった。娘が生まれ、専業主婦の妻はワンオペ状態で新生児の世話にあたっていた。

「本当はあのとき、もう少し手伝えればよかったんですけど。育休を取れる時代でもなかったし……」

子どもは寝付かず、夜泣きもたびたび。男性があやしても状況は悪くなるばかり。育児を一人任された妻は、産後うつのようになり、心身ともに疲弊していた。

医療従事者の男性は、深夜に帰ることがしばしばあった。帰宅してドアを開けたり、部屋の明かりをつけようとしたりすると「なんでこんな時間に帰ってきた? 子どもが起きるだろ」と詰められるようになった。少しでも物音を立てたら、舌打ちをされた。妻は、次第に不機嫌を隠さないようになった。

ハァ…夫が何か話しかけても、返ってくるのは深いため息だけ

大きな音を立ててドアを閉めたり、食器をガチャンと置いたり……。何よりつらいのは、毎日浴びせられるため息だった。

何とか会話のきっかけをつかもうと話しかけると、返ってくるのは深い「ハァ」だけで、あとは無視。ため息が一度もなかった日は、覚えている限りなかった。子どもが大きくなっても状況は良くならず、むしろ悪化した。

「あのとき、何もしてくれなかったじゃないか」妻が抱く恨み

妻がいつ不機嫌になるのかは、予測がつかなかった。普通に会話をしていても、だんだん声が大きくなっていき、結局は怒気を含む。

「あのとき、何もしてくれなかったじゃないか」。かつて育児で抱えた不満を、繰り返しなじられた。

妻はいちど機嫌を損ねると、翌朝になるまでは収まらなかった。子どもの前でもいらだちを隠さないので、男性は違う部屋に行き、息を潜めて過ごした。

不機嫌になる「スイッチ」は、日常のささいなところにちりばめられていた。妻の中では、シャンプーやリンス、冷蔵庫の調味料などの並び順が厳密に決まっているようで、それを少しでもずらすと、「前も言っただろ」と、大きなため息や物音が聞こえた。

買い物に行った男性が、いつも使っているのとは違うメーカーのバターや牛乳などを買ってきたときも、ダメだった。

「気が付けば、何をしても否定から入られるようになりました」と男性は振り返る。

家族で食事に行ったり、旅行に行ったりするときに、計画を立て、手配をするのは男性の役割だった。

希望を聞くと「何でも良い」と言われる。いざ出かけると、妻は必ず「あっちのほうが良かった」「ここには子どもの遊び場がない」などと口にした。

パソコンなどの家電の調子が悪くなると、こちらは何もしていないのに、妻は男性を責めるような口ぶりになり、また不機嫌になった。はじめは機嫌を良くしてもらおうと努めもした。だが、誕生日プレゼントでバッグを買ったときも「別にこんなの欲しくない」。

結婚して10年が経ったころには、夫婦間のコミュニケーションがほぼなくなった。趣味のドラマを見ている妻に、一度「これ、どの辺が面白いの?」と聞いたことがある。他意はなかったが、妻は顔をしかめながら「放っといて」と答えた。

そんなこと言われても…夫の心が折れそうになった瞬間

ごまかしながらやり過ごしていたが、いよいよ心が折れそうになった瞬間がある。

医療従事者の男性はコロナ対応に追われ、連日疲れ果てていた。あるとき、妻が言った。

「絶対に感染してくるな。ウイルスや菌を持ち込んでほしくないから、家に帰ってくるな」

「そんなこと言われてもね、という感じですね」と男性は苦笑する。

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