
若くして掴んだ成功は、4,000万円の負債と共に泡と消えました。倒産後、のちにわかさ生活の創業者となる⻆谷建耀知氏を待っていたのは、妻がヤクルトレディとして家計を支える横で、「桃太郎電鉄」の100年モードをプレイし続ける無職生活……。しかし、再起のチャンスを虎視眈々と狙っていた彼は、ついに「チャンスの予感」に出会います。借金地獄と無職生活の果てに見つけた、商売の再出発点とは。同氏の著書『誰でもできる! 結果に繋がる超・マーケティング思考 すべての答えは個客の中にある』(アスコム)より、みていきましょう。
コンサル会社社長の助言に従い、利益を重視する経営に切り替えた末路
わたしはこの「マザーハウス(※)」を倒産させてしまい、4000万円の借金を抱えることとなりました。31歳の頃でした。理由は「商品の品質が下がったことによる客離れ」でした。
※著者が20代中盤で独立して立ち上げた健康器具や健康食品を取り扱う小売店の店舗わたしは、現在もそうなのですが利益を目的に商売をしていません。「お客さんが喜ぶこと」が目的であり、それをより良い形で続けていくための手段が商売、ビジネスであるという考え方です。ですので、利益率は業界の平均と比べると低いかもしれません。
このような数字のことは、昔から上司、先輩、同僚、税理士、取引先、そして社員やスタッフからもよく言われてきました。それを言ってくださる皆さんに悪意が無いのはわかっています。「もうちょっと利益率を上げた方がいいんじゃないですか?」「仕入れが安い商品にした方がいいんじゃないですか?」と、多くの人が助言をしてくださいました。ですが、それはわたしのやりたい事ではないのです。
当然、継続しないといけないのでそのために必要な利益はいただくように計算をしていましたが、お客さんが喜ぶことを最優先にしていました。自分が試してみて「これは良い」と納得できたものを仕入れ、販売する。色んなお客さんの悩みを聞いて、自分でも調べて、体験して、良かった物を店に置く。自然と仕入れ先は増えていきました。
そんな中、人の紹介で商品卸と人材育成のコンサルティングをしているという会社の社長と出会い「もう少し利益の事を考えた方が良い」、「人材教育もした方が良い」、「仕入れ先を統一したら仕入れ値が安くなる」というアドバイスを受けました。店舗の増加に伴いスタッフも急激に増え、人材教育には苦労をしていたので色々と相談に乗ってもらっていました。そうすると、社員からも「やっぱり、利益は大切ですよ」、「他のお店はこうですよ」という話を聞くことが増え、わたしも「確かに、そうかもしれない」と考え、メイン商品以外の小口商品の仕入れ先を切り替えてしまったのです。それまで、すべての商品を自分で吟味して選んでいたのですが「同じような商品」に変えたのです。
それが失敗でした。商品をリピートして買ってくれる人が、みるみる減っていったのです。
借金4000万円を背負って倒産、それでも「自己破産はしない」
1回は売れるのです。お店のことを好きでいてくれるお客さんたちですから、わたし達がお店に置いていた、すなわち「オススメ」していた商品は好意的に買ってくれました。
しかし、「2回目」がなくなったのです。切り替えた商品が粗悪品だったり、ニセモノ商品だったりしたわけではありません。普通の商品でした。ですが、「良くも悪くも」普通の商品だったのです。それまで選んでいたものは、少なくともわたしにとっては「とても良い商品」でした。
その「落差」がお客さん達に伝わり、一気に信頼をなくしてしまったのです。急いで仕入れ先を戻そうとしましたが、新しい仕入れ先との契約、一度切り替えてしまった仕入れ先への連絡と再度の調整、お店の在庫との兼ね合いなどで数ヵ月かかってしまいました。
毎日多くのお客さんと触れ合う仕事において、数ヵ月はとても長い期間でした。信用と信頼、そして好意から生まれていたリピートがなくなったことで、売上はみるみる落ちていき、来店数も減り新商品も売れなくなる。それと前後して、多くのスタッフが辞めていきました。
あとから聞くと、相談をしていた人材教育のコンサルティングをしている社長が色々と手を回していたようです。わたしの最初の起業は、こうして借金4000万円を残し終わってしまいました。18歳で働きはじめ、2ヵ月目で営業成績1位、78万円のお給料をもらった時から13年間徹底していた「自分が本当に良いと思う商品を、お客さんが喜んでくれる方法で届ける」という道からそれてしまった結果でした。
この体験から、わたしは「どんなことがあっても、商品だけは、絶対に、お客さんを裏切ってはならない」、「品質にはとことんこだわり、妥協をしない」と、改めて固く誓いました。現在、わかさ生活が多くの人に知ってもらえて、商品をご愛顧いただける会社に育ったのは、このような体験で得た学びから「妥協しない最高の商品」を追い求められたからです。
お客さんを裏切るような商品は、どんな理由があれ採用しない。これは今でも徹底しています。4000万円の借金、負債を抱えてしまったわたしは会計士の先生からも債務放棄、破産をしてもいいんじゃないか、とアドバイスをもらいました。しかし、わたしは「個人で返していく」という道を選びました。どんな事情があれ、借金を踏み倒すような人間にはなりたくなかったからです。すべての債権者の方に「破産はしません、必ず返済します」と謝って回りました。一筋縄ではいかないことも多々ありましたが、最終的にはすべての人が同意をしてくれました。
