倒産後のプータロー生活
実はこの時期、岡山から兵庫に拠点を移したわたしは1年間ほど無職、当時でいう「プータロー」をしていました。当時の妻が「ヤクルトレディ」をしながら生活を支えてくれている中、わたしは定職に就かず、日雇いの仕事や、前職の関係で「この商品のことを教えてほしい」という突発的な講演の仕事、時にはお祭りの屋台、いわゆる「テキ屋」のバイトをしたりもしていました。それ以外の時間はジグソーパズルと「桃太郎電鉄」というゲームばかりしていまし
た。
少し余談になりますが、「桃太郎電鉄」というゲームを知っていますか? プレイヤーは社長となり、鉄道を使って日本中を旅するスゴロクゲームです。止まったマスごとにイベントがあり、お金が貰えたり、逆にお金を取られたり。そして、このゲームの面白いところが「お金が貯まったら、止まったエリアの会社や物件、お店を買うことができる」というところです。
ゲームは「1ターンで1ヵ月経過する」というルールで、毎年1回、3月になると「決算」があります。その決算の時「持っている会社や物件、お店によって追加でお金が貰える」のです。要は投資と配当金です。このゲームにハマっていました。ご存じの方には分かると思いますが、わたしは1人で「100年モード」をプレイしたりしていました。1人でも30時間、40時間ほど時間がかかるモードです。そしてこの経験が、後年、わかさ生活を創業してから大変役に立ちました。
「桃太郎電鉄」では、自分が持っている物件に対して「台風が来てお店の売上が落ちた」、「こんな事情で業績が悪かった」、「この地域特有の、こんなことが起こった」というイベントが起こるのです。これによって、わたしは「日本全国の特徴、特性」、「全国の状況に気を配る感覚」、「投資の感覚」を遊びながら身に付けていったのです。話を戻します。
このように、プータローとして日雇いの仕事やゲームをしながら過ごしていた時期でも、わたしの感覚としては絶望や失意、無気力といったものはなく「チャンスのタイミング」を窺っていました。なんといっても4000万円も借金、負債があるのです。普通に仕事をしていても返せませんし、前の会社では失敗をしてしまいましたが、ビジネスの本質、お客さんに喜んでもらう方法、そしてそれを続けていれば売上が伸びるという体験をしていました。そして、大きな失敗も学びました。
毎日、チャンスを探していました。闇雲に何かをする、ただ体を動かして労働する、ではなく「ここで、これなら、い
ける」と直感できるものを探していました。実はこの時期、会計士の先生に薦めてもらいナポレオン・ヒルの成功哲学を学ぶ合宿セミナーに参加しました。9泊10日で30万円。はじめて告白しますが、まったくお金が無かったのでサラ金で30万円を借りて参加しました。
毎朝5時に起き、終わるのは24時。24時に終わるのですが、翌日までの「宿題」も出るためそれをやってから眠る。まったく眠れた感覚が無く、体感的には「1泊10日」の合宿でした。最後の方は、壁がぐにゃりと歪みこちらに向かって迫ってくるような幻覚に襲われました。二度とあの合宿には参加したくありません。そのような自己啓発合宿にも参加しましたが、終わってみたらまたプータロー、日雇いの仕事、ゲーム、ジグソーパズルをしながら過ごす日々です。
「お金が無いから、はじめられない」は、やらない言い訳
しかし、そんなある日、町を歩いていると、1件の空き物件を見つけました。わたしはそれに強烈な「チャンスの予感」を感じました。すぐに貼り紙に書いてある不動産屋に飛び込みました。話を聞くと、家賃が25万円、仲介手数料が12万円、合計37万円でその物件が借りられる、ということでしたが、毎月の生活費と返済で手元にそんな大金はありませんでした。
しかしその話を聞いた当時の妻が義姉に相談してくれたところ、上京資金として貯金をしていた50万円を貸してくれることとなり、わたしは2度目の起業をしました。残り13万円。このお金で、店内の準備と商品の仕入れをしなければなりませんでした。ここで、また助けてくれたのがOEM会社の里中さんでした。最初のお店の時と同じ条件、支払いを2ヵ月先、60日後払いで商品を仕入れさせていただけるようになったのです。
店内の準備は、使わなくなった長テーブルや椅子などを色々な所から借りたり頂いたものを使いました。「え、そんな物で?」と思うかもしれません。しかし、皆さんも「学校の集会」や「地方の公民館」、商店街のお祭りの時などに
設置されている「実行委員のテントの中」、また「ライブやスポーツイベントの受付」、「道の駅にある農家直送野菜の陳列」などを想像してみてください。今でも、パイプ椅子や使い古された長テーブルを使っているでしょう。それと同じです。
物事をはじめる時のやり方は変わりません。「お金が無いから、はじめられない」というのは、やらない言い訳でしかありません。そのような人は、仮にスタート時点で100万円、1000万円、1億円のお金があっても成功はしないでしょう。お客さんに喜んでもらって、リピートしてもらう「仕組み」を考えられずに、お金が減っていって「こういう事情でうまく行かなかった」と分析のふりをした言い訳をするだけになる確率が高いです。少なくとも、わたしはそういう人を数多く見てきました。大切なのは、ファンを作り、「お客さんは、どんなものがあれば喜ぶか? どんなことをすれば、喜ぶか?」と考え続け、行動をし続けることです。
37万円で店を借り、13万円で内装と商品を揃えた、小さなお店。残金はゼロ円、支払いは60日後。60日以内に「翌月以降の家賃25万円」と「仕入れた商品の代金13万円」分の利益を生み出さないといけません。
わたしの取った戦略は、それまでと変わりませんでした。ただ、前回やってしまった大きな失敗経験が、逆に「それまでと変わらない、自分のやり方」に対する「やっぱり、あの考え方が正しかったんだ」という確信となり背中を押してくれました。
「それまでと変わらない、自分のやり方」とは、烏龍茶販売で1位になれた時から変わらない
●ファン作り …… 日々の掃除、お客さんの名前を覚える
●お試し体験 …… 購入前の試飲
●セット割引 …… 単品ではなく12ヵ月セットで値引き
●関係構築 …… 配送などのアフターサービス
●ファン活用 …… ファンの方に協力をしてもらう、感想を貰う
という方法に加えて
●自分が実際に試し、自信をもって伝えられる商品しか扱わない
●自分から売らない、「欲しい」という人にしか売らない
●商品の説明の際には「ストーリー」形式にする
●こちらの悩みや考えを、お客さんに相談してしまう
といったものです。正しいやり方、すなわち「お客さんが喜んでくれるやり方」さえ確立すれば、あと
は「チャンス」を探し、見つけた瞬間に飛び込むことが大切です。
⻆谷 建耀知
株式会社わかさ生活
代表取締役社長
