「美しい」を見つめ直すためのヒントを探った、&Premium143号(2025年11月号)「美しい、ということ」より、ブロックプリンター・向井詩織さんの暮らしに寄り添う"美しいもの"を特別に紹介します。



向井詩織さんにとって「美しいもの」とは。

美大中退後にインドを旅行して、テキスタイル美術館を訪れました。そこで、一級品の布に出合い、そのすごさにびっくりしてしまいました。刺繍でも一つのピースを作るのに一生涯かけているのでは、と思うようなものがずらりと並んでいる。とにかく衝撃的で、その体験が、今の仕事にもつながっています。そういった純粋に美しいと感じるものも多くありますが、今回は、身の回りにあるものということで、数年単位で一緒にいる、安心できるものを選びました。アジュラックというブロックプリントのための版木は、インドのカッチで見つけたもの。私はイスラム文様がすごく好きで、これにもその様式の柄が彫られています。〈キャリコ〉のカディのシャツは頑丈で、手摘み手紡ぎの糸を使っているので着るたびに風合いが増してきます。〈Textile COCOON〉の名刺入れは一本一本糸の太さが違っていて、力強くて格好いい。相棒という感じで使わせてもらっています。
向井詩織ブロックプリンター
武蔵野美術大学造形学部工芸工業デザイン学科を中退後に旅したインドでテキスタイルと出合う。インドと日本を拠点に、天然染料のブロックプリントを制作。
photo : Satoshi Yamaguchi edit & text : Wakako Miyake
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BEAUTIFUL THINGS / 美しい、ということ。&Premium No. 143
洗練された大人が選ぶのは、心がときめく「美しいもの」や「美しいこと」、そして自分らしい美しい生き方ではないでしょうか。いまの時代、効率や成果が大切にされる一方で、夕陽の輝きに見とれたり、花のひらく姿に心を澄ませるといった感覚が、少しだけ後回しにされているようにも感じます。けれど「美しい」と感じる心こそが、私たちの日々を本当に豊かにしてくれるのだとは思います。この一冊では、住まい、装いや日用品などのもの選び、ふるまいや言葉、そして生き方にいたるまで、Better Life の礎となる「美しい」を見つめ直すためのヒントを探ってみたいと思います。
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