「自分の足のサイズは26.5cm」「スニーカーなら歩きやすい」「高い靴ほど健康にいい」。そう信じて疑わない人は多いだろう。だが、その“常識”こそが、足の痛みや膝・腰の不調、慢性的な疲労感を引き起こしているかもしれない。2万人以上の足に触れ、「予約の取れないシューフィッター」として知られる佐藤靖青氏は、こう断言する。「多くの人は、靴選びを根本から間違えています」。
佐藤氏は著書『予約の取れないシューフィッターが教える正しい靴の選びかた』で、靴業界の“売りやすさ”と消費者の“思い込み”が生んだ構造的な問題を、現場目線で明らかにしてきた。その主張は、YouTube番組「さらばのこの本ダレが書いとんねん!」《#198前編》(ゲスト:佐藤靖青)でも大きな反響を呼んでいる。番組内では「3時間3万6000円のアテンド料」「歩き方を見る」「足を触る」「買い物に同行する」といった具体的な仕事の中身が語られ、「日本人のかかとは小さいから靴が合わないことが多い」という指摘が、視聴者の強い共感を集めた。今回は、多くの一般人が勘違いしている靴選びのポイントを軸に、佐藤靖青にじっくり話を聞いた。

◆シューフィッター・佐藤靖青が暴く“靴選びの常識
――「自分の足のサイズは〇cm」。その思い込みはなぜ危険なんですか?佐藤靖青(以下、佐藤):まず大前提として言いたいのは、「靴のサイズ表記は、ほぼ当てにならない」ということです。店で「サイズは何cmですか?」と聞かれて即答できる人ほど、実は危ない。メーカーは、靴を作る際にミリ単位で足を測って設計しているわけではありません。26cmも26.5cmも、実際にはかなり“ざっくり”決められている。サイズはあくまで目安であって、フィットを保証するものではないんです。さらに厄介なのは、止まっている足と動いている足がまったく別物だという点です。最新の計測機器で測れるのは、基本的に静止状態の足。でも、靴は歩くための道具ですよね。歩行時には、足は沈み、横に広がり、ねじれます。その変化は時間帯や体調によっても変わる。だから私は、「自分の足のサイズを信じるな」「自分の足の感覚を信じろ」と言っています。実際に履いて、歩いて、違和感がないか。そこがすべてです。
――「日本人は幅広甲高」はウソなんですか?

◆「日常的に履くならスニーカー」の勘違い
――「スニーカー=歩きやすい」という思い込みだとも主張されています。佐藤:これも非常に多い誤解です。「スニーカー」と一括りにされていますが、実際には用途がまったく異なる靴が混在しています。代表的なのが、バスケットボールシューズやテニスシューズ。これらは「止まる」「切り返す」「ブレーキをかける」ための靴です。歩くための設計ではありません。それにもかかわらず、「有名だから」「昔から履いているから」「デザインが好きだから」という理由で、日常的に履いている人が多い。その結果、膝や腰、足裏にダメージが蓄積していく。歩くための靴には最低限の条件があります。「曲がるべき位置で曲がること」「アスファルトの衝撃を受け止めるクッション」「かかとが安定していること」。この条件を満たしていない靴は、どれだけ有名でも「歩きやすい靴」ではありません。
――「高い靴=体にいい」はなぜ成立しないのでしょうか?
佐藤:正直に言うと、価格と体への優しさはほとんど関係ありません。1万円の靴でも、5万円の靴でも、足に合っていなければ同じです。むしろ問題なのは、「靴だけで体の不調を解決しようとする」考え方。膝や腰の痛みの多くは、姿勢や歩行時の体の使い方に起因しています。靴単体で何とかしようとするのは限界があります。そこで重要になるのがインソールです。多くの人はインソールを「サイズ調整用の中敷き」と思っていますが、今はまったく違います。インソールは靴の性能を引き出すためのパーツ。実際、5000円の機能性インソールを組み合わせた1万円の靴のほうが、何もしていない5万円の靴より体に優しいケースは珍しくありません。「靴×インソール×目的」。この掛け算で考えない限り、靴選びは失敗します。

