
成田凌さんの最新主演映画『#拡散』が、2026年2月27日から公開されます。岡田将生さん主演で話題を集めた映画『ゴールド・ボーイ』で製作総指揮を手がけた、白金(バイ・ジン)さんによる初監督作。映画のこと、演じることへの思い、成田さんに聞きました。
役のビジュアルは細部までこだわりました

「ワクチンで、妻を亡くしました」
富山県の小さな町。介護士の浅岡信治(成田凌)は、動画配信やアイドルの推し活を楽しむ妻と暮らしていた。ある日、ワクチン接種の翌日に妻が急死。浅岡は遺影を持ち、クリニックの前に無言で立ち続ける。この抗議行動に地方紙の記者である福島美波(沢尻エリカ)が目を付け、取材した記事がやがてネットで大バズリ。浅岡は反ワクチンの象徴に祭り上げられる――。映画『#拡散』は、そのあらすじを聞いただけでもチャレンジングな企画に思えます。
「あるドラマの撮影中にマネージャーさんから『おもしろそうな作品がある』と言われて……。脚本を読んでみると、世界中の人が経験した‟あのとき”に、多くの方が感じたであろうことが、富山に住むとある男性の日常のなかに描かれていました。港(岳彦)さんの脚本は髄に入ってくるというか、触れられたくないところに触れられる感覚がありましたね。緊張感が途切れないまま一気に読み終えて、すぐに『やりたいです!』と伝えていました。白金さんは今回が初監督、普段は照明を務められているの宗賢次郎さんが撮影監督ということで、スタッフの皆さんも初めてのチャレンジをされるのだなと。これはより勢いがつくはずだとワクワクしたことを覚えています」
社会派とエンタメが際どいバランスで両立しているような映画の世界観をどのようにとらえたのでしょう。
「誰が被害者で、誰が加害者か? 普通はどちらかにしたがるものかもしれませんが、この映画にはその境目がハッキリしない、どちらとも言える人物が登場します。浅岡信治もそのひとりで、彼を演じる上ではあまり気持ちを安定させないようにしていました。彼はなんとなく生きる気力に欠けていながら、ときどき急に気持ちがぴゅん!と上がる人。なにかに翻弄される人って、そういうところがあるのかな思ったんです。エナジードリンクを飲んだときの血糖値の急上昇みたいに 、スイッチがポン!と入るような」
そんな浅岡の日常は、妻の死によって唐突に寸断されます。
「刺激がない毎日に、急に刺激的なことが起きる。配偶者の死というのは、人が最もストレスを感じるものだと見たことがあって。そういうときの人間の不安定さみたいなものがちょうど……「血糖値」しかいま良いたとえが浮かばないんですけど(笑)、なにかの刺激でぽん!と上がった状態が続いたら人間はどうなるのか、と考えていきました。最初は帽子や前髪で顔を隠しているけど、ネットで有名になったら顔を出すようになって、衣服もちょっとずつ派手になっていく。唇が乾いていたり、顔がむくんでいてだらしない姿勢だったり……。ビジュアルも、浅岡の暮らす部屋も、スタッフさんと細部までこだわりながら、微調整していきました」
唐突に奪われた妻の命の儚さに呆然とする浅岡。地方の小さな町で始まった彼の小さな抗議行スタッフさんと細部までこだわり動は、メディアからSNSへ飛び火し、浅岡の意志とは無関係な広がりを見せていきます。果たして、その行きつく先は? 現実が抱える問題を盛り込んだ作品と言えます。
「ネット社会のいま、誰にでも起こりうる話なのかもしれません。この作品はフィクションですが、決して他人ごとではないと感じています。あと、完成した映画を観たときに気づいたことがあって。みんながカメラ目線で話し出すシーンがあるんですけど、そうすると観ている方は画面のなかの人と急に目が合うわけで、ぐぐっと緊張感が生まれるのではないかと。僕自身、そこでもただ物語に触れているだけではなく、自分ごとになったような感覚を覚えました。あまりやったことのない、特殊な撮り方をした理由がやっとわかりましたね」
映画界のために、自分にできることは?……ずっと考えています

現在、恋愛ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』に出演中の成田さん。舞台に映画に配信に、出演作は途切れることがありません。
「2025年は‟ザ・恋愛ドラマ”など、これまであまりやったことがなかったタイプの作品にも挑戦してみました。いまは俳優にもいろいろな選択肢があって、それぞれに違ったおもしろさがあるなと感じていますが、やっぱり自分はとくに映画が好きです。いま映画もすごく盛り上がっていますし、1本、2本と歴史的な作品が生まれるだけではなく、日本の映画界全体が良い熱量になってくれたらいいなって。映画館に行ってもお客さんがたくさんいて嬉しいですけど、地方の小さな映画館も同じようであってほしいです」
福山雅治さん主演の映画『ブラック・ショーマン』、堺雅人さん&井川遥さんによる『平場の月』にも出演。そのなかで確かに成田さんでしか出せなかったと思える彩りを加えています。
「主役の作品だけをやらせていただいていたら福山雅治さんと出会うことはなかっただろうし、堺雅人さんと一緒にお芝居する機会もそうそうなかったはずで。本当に楽しくて、身に余る機会でした。そんなこともあって改めて映画界全体のことを考え、ひとりひとりが責任を持ってやっていかなければいけないなと。映画界のために、自分にできることは?と……答えはまだ出ていませんがずっと考えていますね」
現在32歳。そうした考えに至ったのは年齢的なせいもありますか?と尋ねると、「ありますあります」と即答します。
「年を重ねていくイコール、いろいろな人と出会い、話をして、情報が入ってくるということです。そうした情報や知恵、知識、まわりの働きを見ながら、自分もちゃんと意志を持って動いていかないといけない、と考えるようになりました。出演シーンが少ない作品でも、自分を求めてくださる方がいるなら。どんなカタチであれ、作品のためになるなら――。ここ1~2年はそんな思いでやってます」

