
◆①シリコン製の歯ブラシ・歯間ブラシ、毛のやわらかすぎる歯ブラシ

しかし、シリコンはそのイメージ通り、歯の汚れ(プラーク)に対して“優しすぎる”素材です。結論から言うと、シリコン製のオーラルケア用品は「痛くない代わりに、汚れが落ちにくい」のが最大の欠点です。
プラークは、例えるなら排水溝に付着するぬめり汚れのようなもの。排水溝の掃除では、ブラシで何度もこすって汚れを落としますが、お口の中のプラークも同様に、物理的にこすり落とす必要があります。その点で、シリコン素材は清掃力が十分とは言えません。
また、「歯茎のマッサージ目的」で使用する方もいますが、歯茎をマッサージすることで歯周病が改善するという医学的根拠(論文)は、現在のところありません。歯周病の状態によっては、炎症部位への過剰な刺激となる可能性もあります。
シリコンの毛先では歯周ポケットに届かないため、歯周病予防を目的とする場合は、通常の歯ブラシを歯面に対して約45度の角度で当てて磨く方法が有効です。
さらに問題なのは、プラークが十分に落ちていないにもかかわらず、「磨けているつもり」になってしまうことです。
ただし、シリコン製のアイテムがまったく使えないわけではありません。
例えばシリコン製の歯間ブラシは、外出先での飲食後に、歯の間の食べかすを簡易的に取り除く用途には適しています。爪楊枝よりも歯間を傷つけるリスクが低い点はメリットです。とはいえ、歯間清掃の本来の目的は「物詰まりを取ること」ではありません。
帰宅後には、フロスや歯間ブラシを用いて、歯間のプラークをしっかり除去することが重要です。
また、シリコンでなくても、やわらかすぎる毛の歯ブラシ(特に、指で押すとすぐ潰れて戻ってこないようなコシのないもの)は同様に綺麗に磨くことができません。メーカーによっては“ふつうの硬さ”の表記があっても、やわらかい製品もあります。
指で触って『ふにゃっ』と簡単に曲がるコシのないものは、プラークという頑固な汚れを落とすのに戦力不足です。やわらかい歯ブラシは重度の歯周病や、オペの後など、歯科医師が指示した際に使用しましょう。逆に硬い歯ブラシを選べば良いというわけではないので、通常は“ふつう”のものを選んでくださいね。
◆②時短・美容目的の多機能歯ブラシ(デカヘッド・こぶ付き)

男性でも、マッサージ機能や「時短」「一石二鳥」という言葉に惹かれて選んでしまう方がいます。
しかし、歯ブラシの本来の目的は、歯の表面や歯と歯茎の境目に付着したプラークを、隅々まで擦り落とすことです。こぶが付いていることで、歯ブラシの操作性が下がり、奥歯まで十分に磨くことが難しくなります。
特に上の奥歯の頬側は、通常の歯ブラシでも磨き残しが多い部位ですが、こぶつき歯ブラシではさらに難易度が上がります。また、下の奥歯の裏側(舌側)は、歯の根元にプラークが残りやすい場所ですが、こぶが舌に当たることで、思うように歯ブラシを動かせないケースも少なくありません。
口元のマッサージ自体を否定するものではありませんが、歯磨きとは切り分けて行うことが大切です。歯磨きは清掃に集中し、マッサージは別のケアとして丁寧に行うことで、口腔内の健康と見た目の両方を保つことができます。
また、こぶつきだけでなく、「一気に磨けそう」な幅広ヘッド(デカヘッド)の歯ブラシも同様です。ヘッドが大きく分厚くなるほど、口の奥の狭い部分には物理的に入りづらくなります。一気に磨ける=細かい所は磨き残しているため、歯磨きの効率が悪くなっています。道具が邪魔をして磨けないという本末転倒な事態になりかねません。

