
1.正規雇用の看護師の離職率
離職率の推移
慢性的な人材不足が問題となっている看護師ですが、他業種と比べて離職率は高いのでしょうか? 厚生労働省が発表している2022年度の全産業平均の離職率は15.0%です。一方、正規雇用の看護師の離職率は過去10年間で10.3〜11.8%で推移しており、全産業平均と比べるとさほど高くないことがわかります。

また、上記の調査から、新卒の離職率は既卒の離職率よりも低いことがわかります。その理由としては、新卒は奨学金の返還免除を受けるために2〜5年程度の継続勤務が必要なことなどが考えられます。
2020年以降に離職率が増加した背景には、新型コロナウイルス感染症による影響があります。日本看護協会が2020年に実施した「看護職員の新型コロナウイルス感染症対応に関する実態調査」によると、病院全体の15.4%で新型コロナウイルス感染症対応を理由とした離職があったと回答しています。
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都道府県別の離職率
病院に勤める看護師の正規雇用者の離職率は、地方ほど離職率が低く、都市部ほど高い傾向が見られます。
都道府県別 看護師の離職率 | |||
|---|---|---|---|
北海道 | 11.9% | 滋賀県 | 12.6% |
青森県 | 8.4% | 京都府 | 11.2% |
岩手県 | 6.5% | 大阪府 | 14.3% |
宮城県 | 8.5% | 兵庫県 | 13.7% |
秋田県 | 7.5% | 奈良県 | 11.7% |
山形県 | 8.2% | 和歌山県 | 10.5% |
福島県 | 9.6% | 鳥取県 | 7.2% |
茨城県 | 10.7% | 島根県 | 9.3% |
栃木県 | 11.3% | 岡山県 | 9.9% |
群馬県 | 8.1% | 広島県 | 10.1% |
埼玉県 | 13.0% | 山口県 | 9.6% |
千葉県 | 13.6% | 徳島県 | 7.2% |
東京都 | 15.5% | 香川県 | 8.4% |
神奈川県 | 13.7% | 愛媛県 | 10.9% |
新潟県 | 8.7% | 高知県 | 10.2% |
富山県 | 8.6% | 福岡県 | 12.3% |
石川県 | 8.9% | 佐賀県 | 9.9% |
福井県 | 9.1% | 長崎県 | 9.8% |
山梨県 | 10.7% | 熊本県 | 11.4% |
長野県 | 9.3% | 大分県 | 10.4% |
岐阜県 | 11.1% | 宮崎県 | 11.3% |
静岡県 | 11.2% | 鹿児島県 | 12.4% |
愛知県 | 12.7% | 沖縄県 | 13.4% |
三重県 | 11.2% | 計 | 11.8% |
上記のデータからは、離職率が最も低い都道府県は岩手県の6.5%で、全国平均よりも5.3ポイント低いことがわかります。一方、離職率が最も高い都道府県は東京都の15.5%で、平均よりも3.7ポイント高い結果となりました。
なお、都心部の病院の離職率が高い原因は、ネガティブな理由だけではなく、病院数が多いため次の転職先候補が見つかりやすいことも考えられます。
病院規模別の離職率
病床規模別の離職率に関する調査からは、規模が大きいほど離職率が低いことがわかります。
正規雇用者 | 新卒 | 既卒 | |
|---|---|---|---|
計 | 11.8% | 10.2% | 16.6% |
99床以下 | 12.7% | 13.8% | 19.5% |
100~199床 | 12.8% | 12.3% | 18.7% |
200~299床 | 11.8% | 10.3% | 16.2% |
300~399床 | 11.3% | 10.8% | 15.9% |
400~499床 | 11.1% | 10.4% | 13.0% |
500床以上 | 11.5% | 9.2% | 11.6% |
大規模病院の離職率が低い理由として、研修制度や福利厚生が充実していることなどが考えられます。また、診療科間の異動も可能であるため、職場環境を変えて希望する経験が積めることも、離職を減らす要因となっている可能性があります。
病院の種類別の離職率
病院の種類別の離職率に関する調査からも、規模の大きさと離職率の関係性がみられました。
正規雇用者 | 新卒 | 既卒 | |
|---|---|---|---|
計 | 11.8% | 10.2% | 16.6% |
国立 | 10.6% | 9.2% | 11.9% |
公立 | 8.8% | 9.8% | 10.0% |
日本赤十字社 | 9.8% | 9.0% | 10.2% |
済生会 | 11.9% | 12.9% | 12.3% |
厚生農業協同組合連合会 | 9.7% | 10.3% | 10.8% |
社会保険関係団体 | 10.7% | 8.5% | 12.0% |
公益社団法人 公益財団法人 | 13.1% | 10.7% | 14.9% |
私立学校法人 | 13.5% | 9.2% | 13.3% |
医療法人 | 14.3% | 11.5% | 18.5% |
社会福祉法人 | 12.4% | 10.9% | 17.5% |
医療生協 | 11.2% | 9.8% | 13.6% |
会社 | 10.2% | 9.7% | 12.8% |
その他の法人 | 12.8% | 11.1% | 17.3% |
個人 | 17.6% | 15.6% | 34.4% |
*「国立」には、労働者健康安全機構、地域医療機能推進機構を含む
*「公立」には、一部事務組合、地方独立行政法人、公立大学法人を含む
*「社会保険関係団体」には、健康保険組合およびその連合会、共済組合およびその連合会、国民健康保険組合を含む
*「その他の法人」には、一般社団法人、一般財団法人、宗教法人等を含む
上記の調査で、正規雇用者の離職率が最も低かったのは公立病院の8.8%です。既卒の離職率も最も低い10.0%となっており、既卒全体の平均16.6%と比べて6.6ポイント低くなっています。
一方、離職率が最も高かったのは個人病院です。正規雇用者全体が17.6%、新卒が15.6%、既卒が34.4%と、全項目で最も高い結果となりました。
離職率が低い職場の特徴まとめ
ここまでの調査結果から考えられる、離職率が低い職場の特徴は以下のとおりです。
- 地方の病院
- 病床数が200床以上の規模が大きい病院
- 公立病院や公的病院
同じ職場に長く勤めたい場合、就職先・転職先の候補を探す際は、給与や条件のほかに、これらの特徴もあわせて確認することをおすすめします。
2.医療・福祉業界の離職率が高い理由とは
厚生労働省が2024年に発表した看護師を含む医療・福祉全体の離職率は15.3%です。16種類に分けられる産業分類のなかでは、上位4位に位置する順位となっています。

医療・福祉業界の離職率が高い理由としては、主に以下2つの原因が挙げられます。
慢性的な人材不足
少子高齢化が進み、医療・福祉業界は慢性的な人手不足に直面しています。とくに看護師の人材不足は深刻化しており、2025年に約13万人不足すると予測されています。
職場によっては、人手不足により看護師一人あたりの負担が増すだけでなく、教育やコミュニケーションの時間を十分に確保できない場合もあります。その結果、新人看護師が成長を実感できなかったり、職員同士の人間関係に問題が生まれたりして、さらに人材が流出する悪循環に陥る医療機関も少なくありません。
他職種と比べて転職しやすい
看護師は、ほかの職種と比べて求人が多い職種です。求職者1人に対する求人数の割合を示す有効求人倍率において、2022年度の看護師は2.20倍となっており、全職種の1.19倍を大きく上回ります。
また、看護師を必要とする病院や診療所は全国各地にあることや、介護施設や保育所などでも資格を活かせる点も、看護師が転職しやすい理由といえるでしょう。

