途中入社のメンバーへのアプローチ
途中入社のメンバーに対しては、オンボーディング期間の3か月間にわたり、人事や経営との定期的な面談の中で「気になること」「感じた違和感」などをフィードバックしてもらう仕組みも設けています。こうした声を吸い上げる場があることで、早期から職場への参画意識が育ちやすくなります。そして、これらのベースには、日報などを通じて一人ひとりが全社に発信する機会が多く、常日頃から全体に自分の意見を発信することに慣れる環境があります。
一方で、こうした仕組みづくりには一定の難しさも伴います。たとえば、業務が忙しい中で時間を確保することが難しいという声もあるでしょう。また、意見を募ることで、「わがままな要望が増えるのではないか」「無理な期待を背負わされるのではないか」といった恐れを感じるマネージャーやリーダーも少なくありません。
だからこそ、取り組みが一過性のものにならないよう、内容や運用方法を定期的に見直し、形骸化を防ぎながら改善を重ねていく姿勢が重要です。こうして「きちんと運用され続ける場だ」という安心感が生まれることで、メンバーも自分の意見を託しやすくなります。仕組みが形骸化しないよう、内容や運用方法を定期的に見直しながら、継続的な改善を重ねていくことです。
自発的に関われる仕組みが整えば、メンバーの意見が場に流れ込み、職場が“みんなでつくる場所”へと変わっていきます。
最初からできる人はいない
新しくチームに加わった人が、初日から中心で活躍できることはほとんどありません。多くの場合、最初は何をしていいのかわからず、少し離れた場所から様子を見ているだけです。しかし、この「端っこ」での時間こそが、チームの文化をつかみ、成長していくための大切な第一歩になります。
このプロセスを理論として示したのが、文化人類学者ジーン・レイヴと社会学者エティエンヌ・ウェンガーの提唱した「正統的周辺参加」です。人の学びや成長は、知識を教わることよりも、共同体の一員として一緒に経験し、関わることで起こるという考え方です。人は教えられて変わるのではなく、共に場に関わる中で、自然と変わっていくのです。
たとえば職人の世界では、弟子が最初から技術を習うのではなく、掃除や道具の準備といった周辺的な仕事から始めます。そこで現場の空気や価値観に触れ、少しずつ中心に近づいていく。気づいたときには、共同体の一員として学びを内面化しています。これこそが正統的周辺参加の本質です。
現代の職場でも同じことが起きます。新人や異動してきたメンバーがすぐに成果を出せなくても、それは自然なことです。重要なのは、彼らが安心して「周辺から関われる」環境をつくること。たとえば会議の場で意見を聞いてみる、小さなタスクを任せてみる、気になる点を尋ねる。こうしたささいなアクションが、参加の入口になります。
共感型マネジメントにおいて、リーダーはこの「周辺からの参画」を支える存在です。すべてを指示するのではなく、一緒に考え、少しずつ任せていく。人は指示されて動くよりも、“巻き込まれて動く”ときに、本来の力を発揮します。だからこそ、共感型マネジメントに求められるのは、正解を教える人ではなく、一緒に成長していける場をつくる人です。そのような関わりが積み重なると、チームは上から動かされる集団ではなく、互いに影響し合い、学び合う「生きた共同体」へと変わっていきます。
