ユーロ圏のGDPに占める金(ゴールド)の割合は、4%を超えているという事実【ウォール街歴40年の金融戦略家が解説】

ユーロ圏のGDPに占める金(ゴールド)の割合は、4%を超えているという事実【ウォール街歴40年の金融戦略家が解説】

本記事では、ジム・リカーズ氏の著書『The New Case for Gold 投資の正解が見えない時代でも、ゴールドだけは裏切らない』(APJ Media 合同会社)から、通貨制度が崩壊したケースでの金/GDP比率の重要性について見ていく。

世界が「影の金本位制」に向かっている現実

世界中の国が、準備資産の構成を多様化するために金の取得ペースを加速している。この傾向が見られることと、アメリカやユーロ圏、およびIMFが大量の金準備を保有していることを考慮すると、世界は「影の金本位制」に向かっていると言える。

各国の影の金本位制を評価するには、GDPに対する金の比率を用いるのが最も適している。金/GDP比率はさまざまな公式データから容易に計算でき、各国の計算結果を比較すると、どの国が真の「金大国」であるかがわかる。

強大な勝利者、つまり世界の「金大国」の中心は、ユーロ圏を構成してユーロを発行している国々である。

ユーロ圏のGDPに占める金の割合は、4%を超えている。アメリカは約1.7%でしかない。興味深いことに、ロシアは約2.7%であり、金の保有はアメリカの約8分の1だが、経済規模が小さいため、金/GDP比率が高くなっている。ロシアは金の取得を拡大している国の1つであり、ユーロ圏と肩を並べることを目指しているようだ。日本やカナダやイギリスは経済大国だが、金/GDP比率はきわめて低く、いずれも1%に満たない。

最も興味深いのは中国だ。中国が公式に発表している金準備は、2015年7月時点で1658トンである。だが、採掘量や輸入統計など信頼できる情報源から、実際には4000トン近くの金ストック(保有量)があることがわかっている(訳注・2025年1月末時点の中国の公式な金準備は約2285トンとなっており、2015年7月以降627トン増加している)。

公式な情報源に加え、筆者は、精製業者やセキュアロジスティクス(訳注・盗難・破損・紛失などの輸送リスクを最小限に抑えるための保管・輸送・取り扱いの安全対策を講じる)業者からも話を聞いて保有量を推測した。最低でもこの推測値を裏付けるに足る信頼できる情報を入手している。中国が金を4000トン以上保有している可能性も十分に考えられる。

ロシアと同じく、中国も、アメリカやヨーロッパと肩を並べるように金の取得を進めている。通貨制度が崩壊したら、金/GDP比率はきわめて重要になるだろう。なぜなら、どのような通貨制度の再構築が図られるとしても、金/GDP比率が基盤となり、新たな「ゲームのルール」になると考えられるからだ。

中国が「金の購入計画」を進めている理由とは

通貨制度の再構築に当たっては、前述のとおり、各国が集まって交渉することになる。

その会合は、ポーカーゲームに例えることができる。ポーカーでは、プレーヤーは大量のチップを持って優位にゲームを進めたいと考える。金は、ポーカーのチップの役割を果たす。世界が自動的に金本位制になるという意味ではない。金の量が交渉での発言力を左右するという意味だ。

世界の公的金は約3万5000トン程度だ(訳注・2024年12月末時点での公的金は約3万6200トン)。「公的金」とは、中央銀行や財務省や政府系ファンドが保有する金を指す。金塊として民間保有されている金や宝飾品や装飾に使われる金は含まれない。

中国が過去7年間に取得した金は3000トンを超える。これは世界の公的金のほぼ10%に相当し、中国が金準備を増やしていることがわかる。金の購入計画を進めるため、中国は情報を非公開にしている。金市場は流動的だが、取引量は少ない。中国の購入意志と行動が完全に開示されたら、金価格はもっと高くなるだろう。

閑散市場に大口の買い手が現れると価格が上昇するのと同じだ。中国としては、金の取得計画が完了するまで、金の価格をできるだけ低く抑えておきたいと考える。

国際通貨が崩壊して世界がゲームのルールを見直さなければならなくなったときに有利に交渉を進められるように、中国は多くの金を取得しようとしている。

カナダやオーストラリア、イギリスのように、金/GDP比率が低い国は、壁際の離れた席に追いやられる。これらの「金小国」は国際通貨の再構築の傍観者となり、アメリカやヨーロッパ、ロシアや中国がどのような制度を考案しようともそれを甘受しなければならないだろう。

このシナリオでは、ドイツがヨーロッパの代表となるため、新制度は、IMFが管理する米・独・露・中の通貨共同体に基づくものになるだろう。これらの主要「金大国」は、すでにこのようなシナリオを想定して準備を進めている。これが、筆者が「影の金本位制」と呼ぶものだ。

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