◆病院や警察では「甲斐甲斐しい親」として振る舞う
――やまゆうさんが病院や警察に保護されたときは、ご両親はどう対応するのでしょうか。やまゆう:必ず迎えに来ます。世間体を重んじる人たちなので、「問題を起こした子どもを見捨てない甲斐甲斐しい親」として振る舞うのだと思います。病院の先生も警察官も、家庭内の詳細はわかりませんから、私ひとりがおかしいと思っていたでしょう。
当時から私は発達障害と診断されていましたので、たいていのことを「認知が歪んでいる」でスルーされていたとは思います。精神科病院にも行かせてもらえましたが、必ず親公認のところでした。もちろん、診察には親が立ち会います。こうして“何もできない子”にされることで、あくまで親の管理下での必要な治療を受けていました。
◆「虐待と縁遠い」と思わせる狙いが?
――お父さんから言われて驚いた言葉はありますか。やまゆう:高校時代、家庭に居場所がなかったことから病み、性的逸脱行動がみられました。出会い系アプリで知り合った男性と懇意になったのですが、望まない性行為をさせられました。驚いた私は警察に連絡をしたのですが、父が迎えに来ました。2人きりになったとき、父から「気持ちよかっただろう? 感謝しなきゃな」と言われ、絶句しました。
それから具体的な言葉ではないのですが、家族ぐるみで仲良くしていた友人2人を私から引き裂いたのも父でした。それぞれ、病気を抱えていたり、母子家庭であったりした子たちのコンプレックスにつけ込んで、私がいないときに「うちの子がこんなことを言っていたよ」と吹き込むんです。それが原因で私は2人の親友と疎遠になり、孤立しました。

やまゆう:あえて教育費をかけることによって、虐待と縁遠いと思わせる狙いがあるのではないかと私は考えています。世間の一部には「大学へ行かせてもらえる人は贅沢だから、そうした人は虐待を受けているとは言えない」という間違った考え方があります。しかし実際には、立派な職業に就いていて、経済的に豊かなのに、虐待をする人はいます。そして隠蔽のために、一般に余分と思える教育を受けさせたりすることがあり得るんです。こうした事実は、もっと知られるべきだと私は考えています。

