◆“わかりにくい虐待”にスポットを当てたい
――ところで現在、やまゆうさんは弁護士を目指して勉強中ですよね。弁護士を志したのは、どのような理由でしょうか。やまゆう:理由は複数あります。まず、大学時代に教授からアカデミックハラスメントを受けたことです。その音声は録音し、弁護士を通して大学側とやり取りをした経緯があります。また別の教授ですが、ほかの女子学生に「乳首を噛みたい」と発言するなど、セクシャルハラスメントもありました。
それから、精神保健福祉士として勤務した病院において、医療者から患者への虐待があったことです。労働組合に参加し、社労士の先生たちと協力して内部告発にこぎつけました。
これらの経験を通して、人権意識や法律の知識がないと社会に太刀打ちできないことを痛感しました。思えば家庭内の虐待も人権問題であり、私と同じような子どもに寄り添うためにも、法律を学ぶことは大切だと感じたんです。
――今後の展望について、ご自身の家庭環境を振り返ってどのように感じますか。
やまゆう:外見上は問題がなく、人から尊敬される職業に就いていたとしても、人権意識のない人たちは存在します。そして、表面的な付き合いに留まれば、問題の根源がみえなくなってしまいます。“わかりにくい虐待”には、なかなかスポットがあたりません。学生時代、いくら訴えても理解を示してくれない大人たちを恨みに思いました。けれども弁護士を目指すうえでは、この経験が、より深層に着眼するきっかけを与えてくれたのだと思います。
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一部の虐待は社会の死角で行われる。無理解に苦しんだ女性が法曹を志し、同じくもがく他者を救うまでの物語をみたいと思う一方で、社会の無関心がそれまで続かないことを心から願う。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

