
2025年の師走、12月13日に没入型文化体験「かげろひ」シリーズの第1弾「虚空 kokuu」が開催されました。その舞台は竹林がひときわ美しい鎌倉・報国寺。この土地にまつわる物語に入り込んでいく不思議な体験をします。川端康成にゆかりのある寺院で、『竹取物語』のストーリーにちなんだ海の幸、山の幸のごちそうが懐石コース様式でふるまわれます。そしてクライマックスにはチェロとフルートの調べに合わせた「能声楽」のライブを心ゆくまで。4時間にわたる「没入型文化体験記」をご紹介します。
行燈の灯りに誘われて竹林へ
午後4時、報国寺山門の閂が外されると、門扉がゆっくりと開きます。行燈の灯りに誘われて石畳を歩くと、どこからともなく着物姿の女性が立ち現れて「ようこそ、おいでくださいました。さあ、どうぞこちらへ」と、2000本以上の孟宗竹が天に向かって伸びる「竹の庭」へと案内されます。用意された椅子席に座ると、さわさわと葉がこすれ合う音が聴こえてきました。耳を澄ますとチェロの音がかすかに重なります。そうこうしていると、庭に設えた茶釜から湯気が立ち上り、一服の白湯がふるまわれました。寒空の下での温かな飲み物に心がほどけてゆくようです。
鈴(りん)の音が響くと、物語の世界へ
着物姿の女性は、まるで語りべのようにこの土地にまつわる物語を凜とした声で語り始めます。そして、チリーンと鈴(りん)を鳴らすたびに、時間が遡っていくかのようです。小道を進むと、崖に掘られた洞窟のようなお墓が見えてきました。「やぐら」と呼ばれる横穴式の墓は、足利家時らが祀られています。

