​汚職スキャンダルで失速したフィリピン経済。2026年「5%成長奪還」の鍵を握る、異例の巨額支出とガバナンス改革の行方

​汚職スキャンダルで失速したフィリピン経済。2026年「5%成長奪還」の鍵を握る、異例の巨額支出とガバナンス改革の行方

​「アジアの経済優等生」として堅実な成長を続けてきたフィリピンが、いま大きな岐路に立たされています。​2025年の実質GDP成長率は4.4%。パンデミック期を除けば、世界金融危機直後の2009年以来となる異例の低水準に沈んだのです。この失速の背景にあるのは、単なる世界経済の減速だけではありません。投資家心理を凍りつかせたのは、国の根幹を揺るがす「治水事業を巡る大規模な汚職スキャンダル」という内憂でした。​深刻な停滞を打破すべく、マルコス政権が繰り出したのは、第1四半期だけで1兆4400億ペソ(約3.8兆円)を投じるという、なりふり構わぬ「キャッチアップ計画」。果たして、巨額の財政出動とガバナンスの浄化は、冷え込んだ投資家の信頼を取り戻す特効薬となるのでしょうか。一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクター・家村均氏が、​最新のBMI予測と政府の動向から、2026年のフィリピン経済が「V字回復」を遂げるための絶対条件を紐解きます。

2025年の振り返り…世界金融危機以来の低水準

2026年の幕開けとともに、フィリピン経済は重要な局面を迎えています。フィッチ・ソリューションズ傘下のBMIは、2026年の実質国内総生産(GDP)成長率予測を5.2%に据え置きました。同数値は、政府目標(5%〜6%)の範囲内ですが、その背景には、2025年の予期せぬ停滞を乗り越えようとする懸命な立て直しの動きがあります。

2025年の比経済は多大な試練に見舞われました。第4四半期の成長率は3.0%に沈み、通年でも4.4%を記録。これはパンデミック期を除けば、2009年の世界金融危機以来の低水準です。政府目標(5.5%〜6.5%)には届かず、前年の5.7%からも大幅な減速を余儀なくされました。

この失速の主因は、高金利による内需抑制と公共投資の停滞です。特に、治水事業を巡る大規模な汚職スキャンダルは投資家心理を冷え込ませ、経済の足を大きく引っ張る形となりました。

この停滞を重く受け止めた政府は、2026年の目標達成に向け、第1四半期に「1兆4,400億ペソ」という巨額支出を計画しています。フレデリック・ゴー財務相は、これが国家予算に基づいた「キャッチアップ」のための戦略的投入であると言明しました。

同相は、今年の成長率が少なくとも5%に達すると自信を示しています。ただし、単なる資金投入ではなく「使途の質」と「財政規律」の両立を強調。投資家の信頼回復に向け、汚職関与者の訴追や公共事業道路省(DPWH)の透明性向上など、ガバナンス改革を並行して進める方針です。

2026年の成長を支える要因とリスク

BMIが2026年の回復を予想する根拠は、主に以下の3点です。

​■投資の反転

遅延していたインフラ事業の再開や予算執行の加速が、下半期にかけて顕著な波及効果をもたらすと期待されます。

■​利下げ効果と消費

中銀による利下げが時間差で需要を喚起するほか、ペソ安に伴う海外出稼ぎ労働者(OFW)からの送金価値向上が家計消費を支える見通しです。

■​エネルギー政策

中長期的な成長基盤として、小型モジュール炉(SMR)導入を含む原子力産業の育成にも注力しています。

​一方で、懸念も残ります。経済を牽引した半導体等の輸出部門は、世界的なサイクルがピークを越え成長が鈍化する可能性があります。また、地政学リスクによる原油高がインフレを再燃させた場合、追加利下げが制限される下振れリスクにも注意が必要です。

このように、2026年のフィリピン経済は、投資の回復と内需の底堅さによって一定の成長を維持する公算が大きいと言えます。しかし、BMIは今回の予測維持について、前年の低成長に起因する「ベース効果」の寄与を指摘しており、見通しには慎重なトーンも含まれています。

政府が公約通りインフラ整備を加速させ、実効性のある汚職対策で投資家の信頼を早期に回復できるか否かが、持続的成長を実現するための真の試金石となるでしょう。

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