男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:「初デートは微妙だったけど…」マッチング後、2回目で女が落ちた32歳男の言動とは
「佳苗には、もっといい人がいると思うよ」
幸太郎と交際して半年経ったころ、突然そんなことを言われた。
「え?どういうこと…?」
「佳苗は素敵な女性だと思うけど、僕よりもっといい人がいるよ」
こうして、あっけなく振られてしまった。
クライアントが開催したパーティーで出会い、仲を深めていった私たち。幸太郎は、医療系スタートアップの役員で、バツイチの38歳。
整った顔立ちもそうだし、レストランやワイン選びのセンスが良くて、一緒にいると毎回心が華やぐことばかりだった。
それに36歳の私は、「今回こそはそのまま結婚!」と思っていた。
交際までは発展した。それなのに、どうして半年で振られてしまったのだろうか…。
幸太郎と出会ったクライアントが開催していたパーティーでも、身長が高い幸太郎は、大勢の中でも目立っていた。
たまたま共通の知り合いがいたので、その人が幸太郎を紹介してくれて、何となく二人で「食事へ行きましょう」という話になった時のこと。
「佳苗さんは、何系のお食事が好きですか?」
「私は…お鮨が好きです」
「え!来週の金曜の夜とかお忙しいですよね?前回予約していた『鮨 影山』の席があるのですが、同席予定の人が急遽出張になってしまい…。誰かいないかなと思っていたんです」
「そうなんですか?ぜひ!行きたいです」
まさかの初デートで、行ってみたかったお鮨屋さんとキタ。
― この人、センスいいな。
そう思った。そして当日。『鮨 影山』のカウンター席で、二人でまずは乾杯する。
「幸太郎さんすごいですね♡ここのお店が取れるなんて」
「食べることが好きなんです。ここは前回友人に連れてきてもらった際に、幸運にも次回の予約が取れて」
イケメンで、高収入でしかも高身長。レストランにも詳しく、文句のつけどころがない。
美味しいお鮨とお酒を堪能していると、必然的に話も弾む。
「じゃあ佳苗さんは、外資系の化粧品でマーケティングをされているんですね。すごいじゃないですか」
「いえいえ、そんなことないですよ。仕事内容は結構地味だったりしますし…。でも、仕事は楽しいですね」
「接待とかも多いんですか?」
「いえ、そんなに」
「そうなんですね。お店とかワインとかにお詳しいから、てっきり会食も多いのかと」
私は高級なお店や予約困難店が大好きだから、人より詳しいと思う。美味しいお食事とお酒が愉しめるのは、大人の醍醐味でもあるし、最高に高揚する瞬間でもある。
細かな包丁目が美しい青魚の握りを食べながら、私はもう一度幸太郎の横顔を見つめてみた。
「お店やワインを勉強しておくことって…ある意味大人のマナーだと思うんです。どこに連れていってもらっても、恥ずかしくない女性になりたいなと思っていて」
「素晴らしいですね。佳苗さんって、いいですね。大人の女性の余裕があって」
「そうですか?付き合うとワガママになるかもですよ」
「えー!想像できない」
私と幸太郎が付き合うのは、必然だったようにも思う。この初回から、私たちはかなり意気投合した。
しかもお会計まで、幸太郎はスマートだった。
「ここは僕が」
「え?でも…」
「今日は僕がお誘いしたので」
「ありがとうございます!」
ここから、私たちはもう一度デートをすることになった。この時も幸太郎は予約の取れない名店に連れていってくれたし、支払いももちろん彼がしてくれる。
だから二度目のデートで、私は思い切って気持ちを伝えてみた。
「幸太郎さんと付き合いたいです」
そう伝えると、少し驚いたような顔をした幸太郎。でもすぐに「僕で良かったら」と、交際することになった。
しかし蓋を開けてみれば幸太郎はとても忙しく、会えるのは二週間に一度。
それでも、私は文句なんて言わない。「会えなくて寂しい」とか「仕事と私、どっちが大事なの?」なんて野暮なことも絶対に言わない。
それが、大人の女性の余裕と魅力だと思うから。
そこに幸太郎も感謝をしてくれて、会うたびにこう言ってくれていた。
「佳苗、なかなか会えなくてごめんね」
「ううん。仕事頑張ってる幸太郎が好きだから。応援しているよ」
「ありがとう。佳苗が理解ある女性で、本当に助かるよ」
そんな、理解力のある良き彼女だったはずなのに…。
会えなくても、幸太郎からの愛と優しさは感じていた。だから会うたびに、私は笑顔を絶やさないようにしていたし、お礼も存分に伝えていた。
年末、ようやく幸太郎と会えた時のこと。幸太郎の仕事がうまくいった記念に、年代物のかなり良い赤ワインを開けてくれたことがあった。
「このワイン、うまいなぁ…。やっぱり美味しいワインは違うね」
幸太郎の言葉に、私もグラスを傾けて色などを確認しながら、大きく頷く。
「綺麗なエッジ…。こんないいワインを開けてくれて、嬉しいな♡あとワインってさ…やっぱり値段に比例するよね。高価なワインだとトップに来る香りと、口に入れた瞬間の華やかさ、そして広がりが全然違うというか。こんな高いワイン開けてくれるなんて、幸太郎は本当にいい彼氏だね」
「さすが佳苗、ワイン詳しいね」
「そうだね。ワイン好きだから」
美味しいものも共有できるし、知識もある。華やかな場へ連れていってもらっても恥ずかしくない…良い女でいることを常に心がけていた私は、幸太郎からしても良いパートナーだったはず。
― これは結婚に向けて、プラスに働くよね?
そう思っていた。
それに会っている時に、ケンカなんてしたことは一度もない。軽くあったのは、私の誕生日に対して熱心でなかった時くらいだろうか。
「幸太郎、最近仕事忙しそうだね」
「そうだね、お陰様で。出張も多いし」
「そうだよね…。でも2月は私の誕生日があるからよろしくね」
「月末だよね、覚えてるよ」
「お店の予約、ちゃんとしてる?あと、その前に一緒に銀座あたりで買い物しない?」
「いいけど。何か見たいの?」
「せっかくだからジュエリーとかがいいなと思って」
「そっか。じゃあ銀座の方でお店探しとくね」
そう言っていたから、私はかなり楽しみにしていた。しかし2月に入っても、幸太郎は誕生日に関して何も言ってこない。
そもそも、私の誕生日の前にはバレンタインというイベントがある。
「幸太郎、バレンタインの日は忙しい?せっかくだから会いたいなと思って」
「空いているとは思うけど…何曜日だっけ?」
「今年は土曜だよ」
「あーごめん。土曜日はゴルフだ」
「え〜!バレンタインは、カップルで愛を伝え合う日なのに。海外だと男性が女性に対して食事をご馳走したり、プレゼントを贈る日なんだよ」
「出た!帰国子女!」
そう言って、笑い合ったはずだった。
しかし私の誕生日も、バレンタインも、やって来なかった。
その前に、私は幸太郎から「佳苗には、もっといい人がいると思うよ」と言われて振られてしまったからだ。
「なんで?私、何かした?」
「いや、何も。でも佳苗は年齢的にこの先、『結婚したい』とかもあるだろうし…別れるなら早いほうがいいかなと思って…」
結婚のプレッシャーなんて、一度もかけていない。
この年の女性は、たしかに結婚に対して無言の圧があるのかもしれない。でも私は彼がバツイチで結婚に焦っていないことも感じていたから、結婚の話を実際に、持ち出したことはない。
ここまで理解力があるいい女なのに、どうして彼は私を突き放したのだろうか。
大人になってからの失恋は堪える。辛くないふりをしているけれど、「私は一生結婚できないのかな…」など、かなり不安になっている。
▶前回:「初デートは微妙だったけど…」マッチング後、2回目で女が落ちた32歳男の言動とは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:2月15日 日曜更新予定
男が36歳女から身を引いた理由は?

