その波は、サラリーマンの“経費文化”にも及び始めている。AIによる経費審査とインボイス制度の浸透で、これまで黙認されてきた接待費のグレーゾーンが急速に消滅しつつあるという。現場の悲鳴と専門家の指摘から、その実態を追った。
◆接待のキャバクラ経費が通らない

「これまでは多少グレーな領収書も、組織の必要悪としてお目こぼしされてきました。しかし、経理が導入したAIが不自然な経費を機械的に弾くようになった。ダメなのは承知していますが、多少の手加減がないと仕事が回らないのも事実です」
税理士の髙橋創氏は、「経費の厳格化は、今後さらに進んでいくはず」と指摘する。
「まず知っておくべきは、インボイス未登録店の領収書が段階的に排除されていく未来です。これまで会社は経費にかかった消費税分を納税額から差し引けましたが、番号のない領収書はこの控除が認められません。
4月からの法改正により、’31年10月には猶予も完全消滅。未登録店での飲食は消費税分が丸々『会社の損失』となります。経理からすれば、キャバクラやスナックに多い未登録店で飲む社員は、会社のお金で遊んでいるのも同然。あと5年もすれば、こうした店での接待は『自腹』か『精算禁止』が常識になるでしょう」
◆インボイス番号があっても…
だが、インボイス番号さえあれば「AIの眼」を欺けるわけでもない。「領収書に『お食事代』と書いても、番号を調べれば店の業態は一発で判明します。また店側に税務調査が入れば、人力とAIによる照合で売り上げ記録との矛盾が突かれたり、利用者が芋づる式に特定されることもある。
他人の領収書を流用する『B勘』や白紙領収書などの不正はもはや不可能です。これらは法律上『業務上横領』になり、発覚すれば弁済と懲戒免職という社会的死が待っています」

