金(ゴールド)価格の値動き荒いが…金の価値は「不変」と言えるワケ【ウォール街歴40年の金融戦略家が解説】

金(ゴールド)価格の値動き荒いが…金の価値は「不変」と言えるワケ【ウォール街歴40年の金融戦略家が解説】

投資可能資産の約10%を金にする「長期保有戦略」とは

2014年、オーストラリアを訪れた筆者は、国内最大規模の金地金取引業者に足を運んだ。同社CEOの話によると、同社の売上が最もよかった月は、金価格が急落していたときだったそうだ。

小口投資家は、ドル価格が下がると買い得だと考える。金のドル建て価格が急落したとき、金を買い求めた顧客が同社のまわりに長蛇の列をつくった、とCEOは言う。

筆者は、投資可能資産の約10%を金にするべきだ、と一貫して投資家にアドバイスしてきた。なぜなら、突然の金融ショックやパニックに備えて資産を守るには、バイ・アンド・ホールド(長期保有)戦略が効果的だからだ。

この戦略を取る人は、日々の値動きに一喜一憂しない。売買によって手っ取り早く儲けることが目標ではない。長期にわたって富を維持することが目標だ。とは言え、急激な価格上昇を追うよりも、価格が下がっているときに買うほうがよい。タイミングを適切に見極めることが重要だ。

2011年から2015年にかけて長期にわたって金価格は下落し、多くの投資家を落胆させた。だが、資産に占める金の割合がまだ10%に達していない投資家にとっては、この価格の下落は金を買う好機だった。

金価格が2011年の高値から下がった理由は簡単に説明がつく。2012年以降、FRBが金融引き締め策をとって人々の認識を変えたことで、ドル高が続いたのだ。

2013年5月、FRBは「テーパリング(訳注・量的緩和策による資産買入れ額を段階的に縮小していくこと)」について協議し、12月には実際に紙幣発行を縮小し、さらに2015年3月にはフォワードガイダンスから「patient(将来の利上げを“辛抱強く”待つ)」という表現を削除し、その後も利上げの可能性についてたびたび言及した。

その間、ユーロは1.40ドルから1.05ドルに暴落し、日本円も1ドル90円から120円に急落した。2015年には世界の50以上の中央銀行が利下げを行い、ドルに対して自国通貨を切り下げた。2014年後半から2015年後半にかけては、原油、砂糖、コーヒーなど、多くの商品価格が暴落した。デフレ圧力とディスインフレ(訳注・物価上昇率[インフレ率]が低下していく状態)圧力が強まった。

「通貨安」という形で金融緩和の命綱を他国に投げたアメリカ

つまり、期待に違わず、金のドル建て価格が強いドルに屈することになる。投資家が問うべきなのは、「それが続くのか。それが新たな世界情勢なのか」ということだ。その答えは「絶対にない」だ。

なぜなら、アメリカがドルの上昇と他国通貨の下落を容認していたのは、他国が助けを必要としていたからだ。日本経済は必死にインフレを起こそうとしていた。欧州経済は、2007年に始まった世界同時株安の中で二度目の景気後退に見舞われていた。ドル高を容認し、円安とユーロ安を容認することで、アメリカは通貨安という形で金融緩和の命綱を他国に投げた。

FRBが失敗したのは、アメリカ経済自体がドル高に耐えられるほど強くなかったからだった。2013年にFRBが金融緩和の縮小に舵を切ると、金融政策ラグ(訳注・経済政策が発動されてから実際に効力が発生するまでの遅れ)を伴って、2014年末にはさまざまなデータにディスインフレを示す数値が現れた。

デフレを憂慮して金利をゼロに引き下げ、何兆ドルもの紙幣を発行し、さらにあらゆる手を尽くしたら、残された唯一のインフレ誘発(FRBはそれを望んでいる)の方法は、通貨を安くすることだ。

FRBが自ら苦境を招いたことを考えると、筆者の予想では、FRBは方針を転換し、量的緩和をさらに進めるかドルを安くすることで再び金融緩和を行わなければならないだろう。どちらの政策を採用しても、金のドル建て価格にとって強気材料になる。

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