
もうすぐ春。
園芸店の店頭には、プリムラや球根花など、思わず手に取りたくなる可愛い花がずらりと並び始めています。
「家のまわりにも春の花を咲かせたいな」
そう思いながらも、広い庭がないから難しい、とあきらめていませんか。
でも、春の庭は“広さ”がなくてもつくれます。
リースという小さな円の中に花を植え込めば、そこはもうひとつの庭。形そのものがデザインを助けてくれる器だから、初心者でも“ちゃんと可愛い”仕上がりになります。
広い庭がなくても大丈夫。
今年の春は、小さなリースから、ときめく庭づくりを始めてみませんか。
庭を“一周”で描くという発想
リースの器には、始まりも終わりもありません。
視線は自然に円を巡り、花の表情を一周しながら味わいます。
その構図は、どこか庭や花壇を上から眺めたときの景色に似ています。
円の中に季節を閉じ込めることで、小さな空間でも“ひとつの庭”が完成するのです。
今回紹介するのは、ハンギングバスケットの第一人者である武島由美子さんの作品。リースを単なる飾りではなく、「庭を描く器」として捉える視点が印象的。
「円というかたちは、それだけで物語をつくる力を持っています。小さくても、立体的で、視線が自然とぐるりと巡るのがポイント」と武島さん。
リースの器が、初心者でもうまくいく3つの理由
① 360度均等に植える=考えすぎなくていい
通常の寄せ植えや花壇は、横や奥行きに広がりがあります。正面を決め、高低差を考え、前後左右のバランスをとる――意外と頭を使うものです。

一方、リースの器は面積が限られているので、基本は一列ぐるっと均等に、同じ調子で回していけばOK。それだけで視線が自然に一周するので、構図で悩むことがありません。

② 円形は「まとまり」を自動で作る
円のフレームが、柔らかさや安定感、まとまりを自動的に生み出してくれます。多少花の向きがバラついても、問題なし。形そのものがデザインを助けてくれるので、初心者でも安心して楽しく作れます。
③ 早春の花と相性がいい
早春の花は草丈が低く、丸みのあるものが多い季節。リースの形と相性がよく、“ちゃんと可愛い”仕上がりになりやすいのです。
3つのリースが描く、3つの「早春の庭」
武島さんに3つの「早春の庭リース」を解説していただきます。
① 花束のように、ぎゅっと咲く「春の入口」のリース

春が来たことが一瞬で伝わる、やわらかな花色をセレクトしました。玄関先やベランダで、椅子に立てかけておけば目線の高さで花束のような華やか春が迎えられますよ。
主役はプリムラ‘エムズセレクション マビリア’。淡いピンクとイエローのグラデーションと、バラのような花形が花束のような存在感を放ちます。同系色のフリル咲きビオラ‘アイクルール’を傍に添えて、やさしい変化を加えました。

花を引き立てるのは、ピンクパープルの斑入り葉のキンギョソウ、クリーム色の斑入り葉のタイム、そしてワイヤープランツ。小葉のリーフの色と質感を重ねることで、甘さの中に奥行きを生み出しています。
<植え方のポイント>
同じ草丈のものを揃えて、規則的に配置するのがリースの寄せ植えの基本です。
まず主役のプリムラを3株、リースの中で三角形を描くように配置。その間をビオラ、タイム、キンギョソウの順にリズムよくつないでいきます。
小さく株分けしたワイヤープランツを鉢ふちに植え込み、ふんわりと動きをプラス。タイムはやや内側寄りに、ワイヤープランツは外側寄りに配置すると、器の輪郭がやわらぎ、ナチュラルでやさしい雰囲気になります。
② いろいろな春を重ねる「ガーデンリース」

こちらは、ほぼ一株ずつ異なる草花を組み合わせたリース。
花壇の一角をそのまま切り取ったような、にぎやかで自然な春の景色を目指しました。
主役をひとつに絞らず、プリムラ・マラコイデス、パンジー、ハナカンザシ、イベリス、プリムラ・ジュリアン、クリスマスローズ、オキナグサ、ムスカリ、黄花アリッサムと、咲き方も高さも異なる花を重ねています。
規則的に並べる①とは違い、ここでは“庭のリズム”を取り入れます。リースはどこから見ても楽しめますが、ほんの少しだけ高さのリズムを意識すると、より庭らしい奥行きが生まれます。

背の高いプリムラ・マラコイデスやクリスマスローズは奥寄りに。
ボリュームのあるハナカンザシやイベリスはサイドへ。
ムスカリやオキナグサは手前に。
こうして高低差をつくることで、小さな器の中に奥行きが生まれます。
これは壁に掛けるリースではなく、置き型を前提にした構成。
上からの視線と横からの視線、どちらも楽しめるよう、高さの違いをあえて生かしています。
<植え方のポイント>
リースは器がデザインを助けてくれますが、庭のルールを少し取り入れてみるとグッと洗練されます。このリースのように異なる草花を使う場合は、「高さ」と「株の密度」を意識して、三角形の立体感が出るようにすると、どの花の顔もきれいに見えます。

また、このリースでの配置は、「均等」ではなく「リズム」がポイント。
- 密な部分(プリムラ・マラコイデスやハナカンザシのボリュームゾーン)
- 少し抜ける部分(ムスカリやオキナグサのスッキリゾーン)
これがあると庭の一画を凝縮したような自然な景色が生まれます。
③ 余白が春を語る、森の林床のリース

早春の森の林床をイメージしたリースです。
春が訪れたばかりの森は、まだ地面が見えていて、花は“点”で咲いている景色です。
だから、このリースではぎゅっと咲かせるのでもなく、多彩な花を重ねるのでもなく、苔の緑をベースに、ムスカリやスノードロップ、ヒナソウをぽつり、ぽつりと配置。
すべてを埋め尽くさず、あえて余白を残すことで、静かな春の空気感をつくっています。

中央に置いた鳥の巣は、実際に庭に落ちていたヒヨドリの巣。自然の中にあった素材を合わせてみたら、より森っぽい雰囲気になりました。小枝などでも同じ雰囲気が再現できそうです。
<植え方のポイント>
このリースで大切なのは、「詰めない勇気」。
- 花は均等に散らすのではなく、少し偏りをつくる
- 苔や土の面をあえて見せる
- 草丈は低めを基本にする
春の林床は、まだ隙間の多い世界。
その“未完成さ”が美しさ。
ぐるりと一周すべてを華やかにしなくてもいい。
ぽつぽつと咲く花の間に、空気が流れるように配置するのがコツです。
