◆一度拡散すれば“半永久的に残る”——デジタル性犯罪の残酷な現実
被害者側の救済としては、動画の削除に関して、プラットフォームへの削除申請や発信者情報開示請求などが考えられる。しかし、インターネット上に一度拡散したデータを完全に消去することは極めて困難だ。「海外のポルノサイトに無断転載されてしまうリスクがありますし、最近の流行として、無断転載した性的動画を餌にして、マッチングアプリ・アダルトサイトへの誘導を行う悪質な例も目にします。匿名性の高いSNSでは、拡散・転載されたあらゆる動画を削除請求することは非現実的ですし、警察が網羅的に検挙することも難しいのが実情です」
南澤弁護士は「デジタル性犯罪」の怖さについて、一度流出してしまった動画を誰にもコントロールできなくなってしまう点だと指摘する。AIによる動画の加工・編集が容易になったことで、動画の拡散が促進され、この恐怖はより大きくなっているという。
一方、加害者本人やその保護者に対する損害賠償請求については、現実的な救済手段として可能だ。警察での捜査を受けており、被害の立証は容易だろう。
「今回のような、不特定多数に送信されてしまったという事情からすれば、過去の判例上は100万円前後が慰謝料相場と想定されます。ただ、被害者が一生の傷を負うことに比べると、十分な金額であるかは疑問です」
このように、被害救済が十分とはいえない状況からすれば、そもそも被害者にならないこと、撮らない・撮らせないことが極めて重要だと南澤弁護士は強調する。
◆SNS時代の性犯罪予防——教育の重要性
近年、未成年による動画を用いたいじめや性被害が相次いでいる。この背景には、TikTokやBeRealなど、動画を媒介とするSNSの流行によって子どもたちの抵抗感が低くなっている点が大きい。また、アダルトビジネスが蔓延し、至るところに性的な広告が氾濫していることで、子供たちが性的刺激の強い環境に置かれていることも無視できない。「性的な話題はタブーにされがちですが、一度流出してしまった動画が誰にもコントロールできなくなってしまうということ、運が悪ければポルノサイトで半永久的に晒し物にされてしまうことなど、動画撮影に伴うリスクを思春期のタイミングで正しく理解することが重要な時代だと感じます」と南澤弁護士は結論づけた。
今回の事件は、単なる高校野球の不祥事としてではなく、デジタル時代における性犯罪の新たな形として、社会全体で考えるべき問題を提起している。
<取材・文/日刊SPA!取材班>
【南澤毅吾】
アディーレ法律事務所。「パチスロで学費を稼ぎ、弁護士になった男」という異色の経歴を持つ。司法修習時代は、精神医療センターにて、ギャンブルを含む依存症問題について研修を受けた経験があり、一般市民の悩みに寄り添った、庶民派の弁護士を志す。アディーレ法律事務所・北千住支店長として対応した法律相談数は、累計数千件に及び、多様な一般民事分野の処理経験を経て、現在は交通事故部門の責任者となる。

