「俺の金だろ?」退職金2,400万円を手にした夫から、“突然の離婚通告”…専業主婦の妻が通帳を開き絶句したワケ

「俺の金だろ?」退職金2,400万円を手にした夫から、“突然の離婚通告”…専業主婦の妻が通帳を開き絶句したワケ

長年連れ添ってきた夫婦でも、老後を前に突然の“別れ”に直面することがあります。厚生労働省『人口動態統計(令和5年)』によると、婚姻期間20年以上の離婚は全体の約2割を占めています。いわゆる“熟年離婚”は決して珍しいものではありません。定年退職や年金受給の開始といった節目で、夫婦間の経済認識や価値観の差が表面化するケースもあると指摘されています。

「退職金をもらった夫が、突然出ていった」

東京都在住の主婦・田村知子さん(仮名)は、夫・光男さん(仮名)から突如として「離婚してほしい」と言われました。

「冗談だと思ったんです。結婚してから35年、ずっと一緒に暮らしてきたのに。退職祝いも家族でやったばかりで、“これからは夫婦の時間だね”って笑い合っていたんです」

光男さんは大手メーカーに勤め上げ、定年退職と同時に2,400万円の退職金を受け取りました。今後は厚生年金として月22万円ほどが支給される予定。2人の子どもはすでに独立しており、住宅ローンも完済済み。知子さんは「ようやく安心できる老後が始まる」と思っていました。

しかし、退職から1ヵ月後、光男さんは突然こう告げたのです。

「今までありがとう。でも、これからは一人で生きたい。離婚届、ここにあるから」

「俺の金だろ」…夫の言葉に、言葉を失った妻

「頭が真っ白になりました。“なにかの冗談?”って聞き返しましたけど、本気でした」

離婚理由を問い詰めると、光男さんはこう言ったといいます。

「これまで家族のために働いてきた。退職金くらい自由に使わせてくれ。俺の金だろ?」

知子さんは専業主婦。光男さんの収入で家計を支えてきましたが、「一円も家計に入れてくれないつもり?」と問い返すと、光男さんは「好きに使えばいい」と通帳を1冊だけ手渡してきました。

「でも、その通帳を見たら、残高はたったの27万円しかなかったんです。退職金は? 年金は?と思いました」

その後、別の口座に退職金の全額が移されていたことが判明。そこにアクセスする権限は、知子さんにはありませんでした。

離婚に際しては、夫婦で築いた年金や財産は公平に分けられる仕組みがあります。特に2007年から導入された「年金分割制度」により、専業主婦でも婚姻期間中の厚生年金部分については、最大で半分を分割して受け取ることができます。

また、退職金も婚姻期間中に形成された財産とみなされ、民法上の「財産分与」の対象となります。実際の分与割合はケースによりますが、多くは2分の1ずつとされるのが一般的です。

しかし知子さんは、当初これらの制度を知らず、「泣き寝入りするしかない」と思い込んでいたと語ります。

「市の相談窓口に行って初めて、“法的に分けてもらえる”と知りました。でも、夫は絶対に応じないって言っているし、調停するのも大変で……」

「夫婦の老後」は幻想だったのか

金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によれば、60代の単身世帯の金融資産中央値は210万円です。一方で、同じ世代の夫婦二人世帯の中央値は700万円。夫婦で暮らしていくことを前提とした資金計画が破綻すると、老後の生活は一気に厳しさを増します。

知子さんは現在、離婚調停の準備を進めながら、週3日のパートに出ています。夫との話し合いは進んでおらず、「このまま逃げ切られるかもしれない」という不安も口にしました。

「定年後に離婚したい」という夫の申し出――これは決してレアケースではありません。法務省『司法統計年報』や厚労省の離婚統計によると、近年、60歳以上の離婚件数は緩やかに増加しています。背景には「子育てが終わったら終わり」「夫婦としての役割は終えた」という価値観もあり、男女ともに新しい人生を選びやすくなっている現実があります。

しかし、経済的に自立しにくい立場にある専業主婦にとって、定年離婚は致命的なリスクにもなりえます。

「もう少し早く、制度やお金のことを知っておけば……」と語る知子さん。

老後を迎える夫婦にとって必要なのは、相互の感謝と信頼だけではありません。「いざ」というときの備えとして、法律・制度・お金に関する正しい知識が、これまで以上に重要になっているのです。

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