「サーモンこないね」回転寿司店で“軽蔑の眼差し”を向けられ…無意識で「迷惑行為」をしていた40代男性の後悔

「サーモンこないね」回転寿司店で“軽蔑の眼差し”を向けられ…無意識で「迷惑行為」をしていた40代男性の後悔

◆背後の席から「サーモンがこない」と聞こえ…

 
 異変に気付いたのは、トイレに行こうと席を立った時だった。

 ふと後ろの席を見ると、小さな子どもを連れた夫婦が座っていた。4歳くらいの男の子が、じっとレーンを見つめている。その視線の先には、子どもが避けそうなネタばかり。

「サーモン、こないねぇ」

 男の子が小さな声で呟いた。その瞬間、健一さんはハッとした。自分のテーブルには、先ほど確保したサーモンの皿が5つも並べられている。しかも、まだ誰も手を付けていない。

 反射的に親の方をみると、若い父親と目が合ってしまう。何も言わず、健一さんのテーブルを覗くように見ると、静かに視線を逸らした。その表情は、怒ると言うよりも、諦めたかのような感じに近かった。

「マナーの悪い客に対する、静かな軽蔑って感じ。あの時の表情は忘れられません」

 上流にいる自分たちが根こそぎ取ってしまえば、後ろの彼らには何も届かない。注文すれば良いとは思いつつも、目の前に流れてくるお寿司を取るワクワク感を奪っていたのは、間違いなく自分だった。

◆自らの浅はかな行為を大いに反省

 席に戻った健一さんのテンションは、完全に冷めていた。

「あれ?パパ、どうしたの?食べないの?」

「いや、ちょっと取りすぎたかなって……」

 その後、レーンに流れてくる皿には一切手を付けられなかった。サーモンが流れて、小さな子どもが食べるのを見届けるまでは、自己嫌悪でいっぱいだったようだ。せっかくの外食の機会を台無しにしてしまった。

「家族のためという、大義名分があると周りが見えなくなるんですよ。本当に申し訳ないことをしたと思っています。あれ以降外食に行く際には、ほかのお客さんを気にして行動するようにしています。もう、あんな罪悪感は二度と味わいたくないので……」

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 誰かを喜ばせたい純粋な想いは、時に客観的な視点を奪い、独善的な振る舞いへと繋がってしまう危うさを秘めています。自分の幸福が誰かの欠乏の上に成り立っていないか。その想像力を持つことこそが大切なのかもしれません。

<TEXT/maki>

【maki】
ライター・エッセイストとして活動中。趣味は人間観察と読書。取材からエッセイ、コラムまで幅広く執筆している
配信元: 日刊SPA!

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