年金繰下げなんて冗談じゃないよ…縁側でくつろぐ62歳元会社員が苦笑。〈年45万円の減少〉でも早期受給を決断した「納得の理由」

年金繰下げなんて冗談じゃないよ…縁側でくつろぐ62歳元会社員が苦笑。〈年45万円の減少〉でも早期受給を決断した「納得の理由」

年金は原則65歳からの受給ですが、「繰上げ」や「繰下げ」という選択肢も用意されています。60歳で仕事を退き、年金も繰上げて受け取る決断をした男性がいました。長寿時代といわれるいま、あえて年金が減る道を選んだのはなぜなのか――その背景を見ていきましょう。

「何もしない時間がほしい」60歳でリタイア・年金繰上げを選択した男性

「仕事から解放された『自分のための時間』を、少しでも長く過ごしたかったんです」

そう語るのは、地方都市に暮らす元会社員のBさん(62歳・仮名)です。再雇用は選ばず60歳でリタイア。さらに、年金の5年繰上げ受給を決断しました。

繰上げをすると、1ヵ月は辞めるごとに0.4%年金が減額されます。Bさんの場合、本来、65歳から受給した場合の老齢基礎年金・厚生年金を合わせた年金額は、年額約190万円(月額約16万円)となる見込みでした。しかし、60歳からの繰上げを選んだことで、減額率は24%。現在の年金額は、年額約145万円(月額約12万円)にとどまります。

「減ることはわかっていました。45万円ほどの減額がずっと続く。小さな影響じゃありません。でも、65歳まで働いて年金もそこまで待つという考えは、さらさらなかった」

とはいえ、Bさんは決して“余裕たっぷりの早期リタイア組”ではありません。

・貯蓄は退職時点で約2,000万円弱
・実家を相続して住んでいるが、築40年以上
・今後、屋根や水回りのリフォーム費用が数百万円単位で必要

「一応計算はしていますが、ギリギリですかね。私と妻の生活は本当に地味。贅沢をしなければ、やっていけない数字ではないと思いました」

Bさんは後悔はしていないと断言します。

亡き父に重ねた自分の老後

Bさんの決断の背景にあったのは、定年が遅すぎるという“強い違和感”でした。

「私の父なんかは、55歳で定年して家にいましたよ。それが普通の時代もあったんです」

高度経済成長期から1980年代頃にかけて、日本では大企業や公務員を中心に、55歳定年が一般的でした。当時も、定年後に嘱託や再雇用という形で働き続ける人はいましたが、今のように制度として保障されたものではなく、あくまで会社の裁量に委ねられていました。それでも多くの人にとって、55歳が「一区切り」であったことに変わりはありません。

「60歳ならまだしも、今や65歳が当たり前。いくら長生きになったからと言われてもね……。うちの父は70歳になる前に亡くなりました。もし65歳まで働いていたら、自由な時間は5年もなかったことになる。何十年も身を粉にして働いて、それだけ。自分に置き換えたら、あまりにも酷だと思ったんです」

Bさんには、海外旅行に行ったり、お金のかかる趣味を楽しみたいという欲はないといいます。叶えたいと思っていたのは、庭の手入れをしたり、縁側でゆったり本を読んだり。どれもささやかですが、仕事に追われる日々の中では叶えにくいことばかりでした。

「明確な目標があって早く会社を辞める人もいるでしょう。私にはそんな夢はなくて、ただ、ストレスのない時間が欲しかった。『何もしない時間』を含めて、余生を自分のものとして使いたかったんです」

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