
資産運用においてリスク分散が叫ばれる昨今。日本円や国内資産だけに依存するのではなく、成長著しい海外へ目を向ける動きが加速しています。特に東南アジアの不動産市場は、キャピタルゲインとインカムゲインの両面で期待値が高く、中には投資をきっかけに「海外移住」というライフスタイルの変化を手に入れる人もいます。本記事では、FP1級技能士・永田智睦氏の著書『人生の選択肢を増やす資産スイッチ』(アスコム)より、実例とともにその魅力と現実的な注意点について解説します。
海外不動産購入をきっかけに、移住してみると…
実際に当社に相談にいらして、海外不動産を所有された方の事例をご紹介したいと思います。
都内にお住まいだった30代のご夫婦は、もともと海外旅行が好きで、年に何回か海外諸国を訪れていらっしゃいました。その中で、このご夫婦が気に入ったのがフィリピンだったそうです。
購入当初は、「本当に大丈夫かな……」と不安もあったようですが、実際に完成した物件をとても気に入っておられました。そしていつしか、「旅行で訪れるのではなく、ここに居住したい」という思いが強くなり、移住を決められたのです。
移住された後にお話を聞いてみると、ご夫婦のフィリピン熱はさらにアップ。「フィリピンの経済に興味が湧いて、フィリピンの株も買ってみたくなりました」「現地のいろいろな銀行を見て回って、口座をつくったんです」と嬉しそうにおっしゃるのです。
また、フィリピンは現地に住む人が行く店と、外国人が行く店はしっかり区分けされているのですが、居住したことで行ける店が増え、「自分たちが食べたいものやつくりたいものによって、いろいろな店に行けて嬉しい」というお話も伺いました。
不動産購入をきっかけに、「その国をもっと深く知りたい」という思いや愛着を抱くようになられたようです。幸せそうなおふたりを見て、「海外不動産投資とともに、このご夫婦ならではの幸せを掴まれたのだな」と感じ、私も嬉しくなりました。
ご夫婦は現在、購入された物件は賃貸で収益を得ながら、自分たちは好みの物件に移り住んで暮らしていらっしゃいます。最近は、追加で新たな物件を購入され、さらにフィリピン熱が高まっているように感じました。
日本よりもはるかに期待できる?新興国の不動産
「海外不動産はあくまでも投資対象で、自分で住むものではない」と考えている方も多いかもしれませんが、前述のご夫婦のように海外不動産の購入を機に、マレーシアやタイなどの東南アジアの国々に移住される方も一定数いらっしゃいます。
別のお客様では、リタイア直前にマレーシアで不動産を購入され、リタイア後に奥様と一緒に移り住んだという方もいらっしゃいます。海外不動産の購入を機に、人生も丸ごと変わったケースです。
とはいえ、購入の入口としては投資・運用目的の人が多いというのが私の印象です。これはやはり新興国の経済が右肩上がりであることに尽きます。ここ数年の経済成長率を見ても、多少変動はあるものの5~7%前後と高く、それに伴い、土地や物件の価格も上昇しています。完成前の物件が、完成するまでに値上がっていくケースも多く、建設前や建設途中の物件を購入する「プレビルド投資」にも注目が集まっているのです。
実際、東南アジア不動産投資に取り組む方のほとんどは、物件完成前から購入を決断されますが、物件が完成してから「やっぱり自分が住みたい」という方、値上がりを見込んで「売却用として少し時間を置こう」という方、「最初は早めに売却したいと思っていたけれど、賃貸物件で長期保有のほうがやっぱりよさそうだね」など、購入当初とは異なる活用方法を検討される方もいます。
また、少しずつ増加している方法として、すでに完成している物件の中から、日本で言うオーナーチェンジでの物件を探すという方もいらっしゃいます。
少子高齢化や人口減少が深刻な日本と異なり、フィリピンをはじめとした東南アジアの新興国には若い世代が多く、人口全体も増加しています。それだけ国に活気があふれていると、売却にしても賃貸にしても利益を期待できるのです。出口の選択肢が幅広いというのも、東南アジア不動産の魅力だと感じています。
ちなみに特に近年、盛り上がりを見せているのは賃貸分野です。実は、新興国にマンション賃貸というシステムが導入されたのは比較的最近のことで、ほんの少し前までは、戦前の日本のように長屋のような住居がほとんどでした。それが、経済成長に伴う所得上昇や人口増加によって住宅需要が拡大したこと、さらには将来を見込んだ海外投資家たちの投資の影響も加わり、マンション建設、供給が急ピッチで進行していったのです。
そのため、日本人が購入した物件に対して、現地の人が「借りたい」という需要は数多くあります。この潮流は、今後も続いていくでしょう。もちろん、その流れをキャッチするためには、賃貸需要の多いエリアを選び、利回りや今後のキャッシュフローの見通しを考えることも必要です。
このあたりは、日本における不動産購入と全く同様です。しかし、将来の可能性という点で東南アジアの不動産は、日本よりもはるかに期待できるものだと個人的には強く感じています。
