鳥居みゆき「生きづらいのがデフォルトなんです」作家・こだまと語る“普通”という世間の物差しに対する違和感

鳥居みゆき「生きづらいのがデフォルトなんです」作家・こだまと語る“普通”という世間の物差しに対する違和感

◆周りの大人が勝手にワーワー騒いでいるだけ

エッジな人々 鳥居みゆき×こだま
「普通」を演じていたら苦しかったと思う (鳥居)
鳥居:あと、面白かったのは、作品の中心にいるけんちゃん自身は何もしてないところ。周りの大人が勝手にワーワー騒いでいるだけなんですよね。私自身も本を通じてけんちゃんを見ているつもりだったけど、「実は、けんちゃんの目に映った“私”を見てたんだな」って、読み進めていって気づきました。

こだま:まさにそれが書きたかったことです。関わる人の視点によって障害の見え方は変わるもの。障害がある人が変化してすごいことをする話には絶対したくなくて。自由奔放なけんちゃんの姿を見て、周りの大人たちが自分なりに考えていく。そんな世界を書きたかったんです。

鳥居:すごく伝わります。あと、252ページの「ゆっくりで大丈夫ですよ」って言葉も好き。

――作中に登場するコンビニ店員の七尾光が、レジなどで障害のある人や高齢者、小さい子を気遣ってかけるひと言ですね。

鳥居:「普通」と呼ばれる人にだって何かしら得意不得意はある。誰かの不得意に配慮をするのは、ひいきじゃなくて思いやり。配慮は障害のある人だけへのものじゃないなと思いました。

こだま:障害やケガなどと、少しでも身近に接点があれば、距離は縮まるものです。この本を通して、障害との距離を縮めてくれる人が増えたらと思います。

――鳥居さんは過去に「発達障害の検査を受けたら何か判明するかもしれないけれど、診断はあえて受けない」とも話されています。その理由は?

鳥居:自分には必要ないかなって思ったんですよね。自分の苦手なことはだいたい把握しているし、対処もできているので。

◆私にとっては「生きづらいのがデフォルト」

――日常で困ることはない?

鳥居:いや、毎日めちゃくちゃ困ってます! でも私にとっては「生きづらいのがデフォルト」なんです。たとえば、私は10代の頃からヘルニア持ちなのですが、長年病気と付き合っていると「腰が痛いのが普通」になる。それと同じで、生きづらい状態が通常運転なんですよ。

こだま:それ、障害の話でもあり、生き方の話でもありますね。子供の頃は「生きづらいな」と思うことはありましたか?

鳥居:ありました。今日もそうですけど、つい自分ばかりが一方的に話しすぎちゃうとか。でも、当時は「発達障害」なんて言葉がなかったから、「変わってるね」「不思議ちゃん」で終わり。いじめも受けましたが、私は卑屈になるタイプじゃなく、「いつか復讐してやる」って思う迎撃型。その気持ちをバネにしたから、芸能界でもやってこれたんだと思います。

こだま:強いなあ。そんなふうになれた理由はなんですか。

鳥居:両親が自由だったからですね。特に父からは「人と比べるな。比べるなら昨日の自分とだけ比べろ」と言われてました。

こだま:現在の教育支援の考え方に近いですね。私も指導員をしているとき、子供たちを絶対比較しないようにしていました。

鳥居:たぶん、父も誰かと比べられて嫌な思いをしたんでしょうね。ウチは姉が活発で優秀だったんですけど、できない私にも、父はいつも「できなくても大丈夫」と言ってくれて。

こだま:私は正反対で、活発な妹とよく比較されていました。参観日も、母からは「あんたを見ても面白くないから、妹だけを見に行く」と言われてました。

鳥居:え、面白くないって何?

こだま:変化がないんですよ。私は赤面症がひどすぎて、人の注目を浴びるのが耐えられない。だから手も挙げないし、座っているだけ。一方、妹は自分から手を挙げるから、変化が多い。

鳥居:ひどい。でも、本当はあまり主張をしない子のほうが、脳みそが忙しいですよね。

こだま:そうなんです。多くの人はアクションの多い子に目が行きがちだけど、本来は自分から動けないような子を一番見てあげたほうがいいんですよね。


配信元: 日刊SPA!

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