鳥居みゆき「生きづらいのがデフォルトなんです」作家・こだまと語る“普通”という世間の物差しに対する違和感

鳥居みゆき「生きづらいのがデフォルトなんです」作家・こだまと語る“普通”という世間の物差しに対する違和感

◆管理する側の都合で「普通」がつくられる

鳥居:最近実践してるのが「できないことは無理にやらず周囲を頼ろう」ってことです。たとえば私、いまだにリボン結びができないんです。今日履いているスニーカーの紐も、人に結んでもらったものを接着剤で留めているので、絶対ほどけない。

こだま:苦手を把握して、対策しているのがすごい。私の場合、あまりにもできないことが多いので、数年前から「発達障害の検査を受けたほうがいいのかな」と悩んでいました。

鳥居:きっかけは何ですか?

こだま:喫茶店のバイトで、店主に仕事の手順を何度説明されても覚えられなくて。ときにはドレッシングのかかってない生野菜など、未完成の料理をお客さんに出したこともありました。

鳥居:素材の味!

こだま:昔からそんな失敗ばかりで適応できないんです。でも、いま思えば自分ができない理由を探したかっただけなのかも。

鳥居:障害がわかっても、ミスしなくなるわけじゃない。だから、わざわざ受ける意味はないのかなって自分は思いました。でも、私は「変」が強みになる芸能界にいたのがよかったんでしょうね。事務職に就いたときは、落ち着きがなさすぎて即クビでした。あのまま「普通」を演じていたら苦しかったと思います。

◆「個性を大事に」なのに、はみ出したら怒る

――「普通」って何なんでしょう。

鳥居:「普通」なんて、そもそもないと思っています。

こだま:でも、いまだに学校や社会では、「普通がいい」という空気がすごく強いですよね。「個性を大事に」と言いながら、誰かがはみ出したら怒る。

鳥居:「みんなMサイズを着なさい。SとLはあんまり作ってないから」って。学校は本来興味のある教科を見つける場所なのに、全部で平均点を取らなきゃいけない。でも、それって、冷静に考えるとおかしいですよ。

こだま:私の場合、目立たず「普通」でいれば安心って感覚もあったんです。でも、「このままだと何も残らない大人になる」って急に怖くなったんですよね。結果、気づいたら、眠ることも忘れて文章を書く日々を送るようになっていました。

鳥居:寝ないで文章を書く時点で普通じゃないです(笑)。でも、この世界って、こだま先生みたいに「ちょっと異常な人たち」がつくっているんですよね。いま座っているソファも、最初は誰か変な人が「こういうものがあったらどうか」とこだわり抜いて生み出したはず。だからこの世界は「変な人が作った変なもの」で溢れている。みんな変だし、普通なんて存在しない。だからこそ、この世界はいいんだって私は思っています。

エッジな人々 鳥居みゆき×こだま
「個性を大事に」なのに、はみ出したら怒る (こだま)
【鳥居みゆき/Miyuki Torii】
1981年生まれ。お笑い芸人として活動する一方、女優、小説家、絵本作家などとしても活動。3月14・15日には有楽町のI’M A SHOWにてダイアモンドユカイによるロッキンミュージカル『シン・シャドウブラウン&ブラックパイレーツの冒険PartⅡ』に出演

【こだま/Kodama】
作家。’17年、実話を基にした私小説『夫のちんぽが入らない』でデビュー、大きな話題を呼ぶ。エッセイ『ここは、おしまいの地』(太田出版)で第34回講談社エッセイ賞を受賞。現在、OHTABOOKSTANDにてエッセイ「おしまい定期便」を連載中

(※1)『けんちゃん』
こだま氏が、特別支援学校の寄宿舎で働いていた際に出会ったダウン症の高校生“けんちゃん”への思いを胸に描いた小説。指導員やコンビニ店員ら、彼と関わった人々の視点で綴る全5章(1650円)

(※2)児童発達支援士
子供の発達の特性を理解し、その成長をサポートする民間資格。鳥居氏はこの資格について強く関心を持ったことから、集中的に勉強。わずか10日で取得した

(※3)発達障害コミュニケーションサポーター
特性に配慮したコミュニケーションを通じ、自己肯定感を育てる支援を行うための資格。発達障害による不登校や引きこもりなど二次障害を防ぐ視点もある

(※4)『でこぼこポン!』
’22年からNHK Eテレで放送。発達にでこぼこがある子供とその家族を、ドラマやゲーム、歌、ダンスで楽しくサポートする番組。鳥居氏はメインキャラクターの「でこりん」として登場

(※5)特別支援学校
心身に障害のある子供たちの自立や社会参加を支援・教育する学校。自宅が遠方などの理由で通学が困難な場合は、寄宿舎に入ることも。こだま氏は寄宿舎で指導員として3年間勤務した

(※6)ダウン症
21番染色体が1本多い=3本あることで、知的発達の遅れや身体的障害を併発する先天的特性。同じダウン症でも発達や身体的特徴に個人差が大きく、必要な支援も個人によって異なる

取材・文/藤村はるな 撮影/杉原洋平 構成/髙石智一(本誌)

―[インタビュー連載『エッジな人々』]―

配信元: 日刊SPA!

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