鎌倉時代に中国・宋から禅宗とともに伝わった精進料理は、仏教の戒律に基づき、動物性食品だけでなく、にんにくやねぎなど香りの強い野菜も慎む僧侶たちの修行食であり、和食の原点ともいわれている。江戸時代に隠元禅師が煎茶とともに伝えた精進料理は、油を使った揚げ物や炒め物、葛でとろみをつけた濃厚な味わいの料理を大皿で提供するもので、普茶(ふちゃ)料理と呼ばれている。

八雲茶寮では、精進料理の伝統を守りつつ、現代のライフスタイルに合った料理を提案している。

初めに登場するのは、ひと口。北海道・本場折浜の天然真昆布を一昼夜水につけた出汁(だし)だ。料理のベースとなる出汁はうまみも十分で、味は濃厚。

次にお椀(わん)として出てくるのがごま豆腐。生のごまを使っており、形も味もシンプルにして、香り高く深みのある味だ。
精進百珍は、大きな器で盛りつけられた料理をそれぞれにとっていただく。「七草と金柑(きんかん)の白和(あ)え」「海老芋(えびいも)の蒸し焼き」「豆腐の味噌(みそ)漬け くるみ飴煮(あめに)」「金時人参(きんときにんじん)のかぶら寿し」「葛そうめんの柴漬け和え」「南高梅の天ぷら」「高野豆腐とひじきの炊き合わせ」「きのこ朴葉(ほうば)味噌焼き」がテーブルに並ぶ。




これらをちょっとずつ取り分けながら料理をいただいていると、食材の豊かさや様々な工夫なども知ることができてなかなか楽しい。

続いては雲片(うんぺん)。始末料理と呼ばれるもので、料理に使った野菜の切れ端などを煮て調味し、葛でとろみをつけた汁ものだ。食材を余すところなく使ったこの料理には、湯葉と米麩(こめふ)が入っている。具がたくさん入った汁は出汁がきいているうえに野菜のうまみも加わり、体にやさしく、おいしい。

終盤には四つ椀。理にかなった使い方と機能美を備えた朱塗りの飯椀と汁椀は、蓋を取り皿として使うことができ、ひとつに重ねるときれいに収納できる。こちらにはごはんとみそ汁のほか、香の物、そして、別に供される八寸(はっすん)としてうなぎもどきと、ごぼうの和えものをとっていただく。
精進料理では、食べ終わったあとに豆茶を注いで器を洗い、飲み干す。こうしてきれいにして、器を重ねる。初めてやってみた一連の作法。ちょっと緊張しながらも、自然に感謝し、食べられることに感謝するという思いが、改めて新鮮に感じられる。食後は季節の和菓子。
シンプルで素材のもつおいしさを生かした精進料理の数々は、日本の風土が生んだ食文化の知恵や豊かさに自然と気付かせてくれる。そんな趣ある味わい深い体験を楽しんでみてはどうだろう。
text: Izumi Miyachi(マリ・クレールデジタル編集長)
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