幼少期、世田谷の豪邸に住んでいたが…父の事業失敗で夜逃げ、6畳一間のアパートへ。働き詰めの母は昏倒。月収31万円・44歳男性が、借金まみれの父から唯一相続した「差し押さえ不可の遺産」

幼少期、世田谷の豪邸に住んでいたが…父の事業失敗で夜逃げ、6畳一間のアパートへ。働き詰めの母は昏倒。月収31万円・44歳男性が、借金まみれの父から唯一相続した「差し押さえ不可の遺産」

受け継いだものと、断ち切ったもの

ユウスケさんが負の連鎖を断ち切り、人生を再建した理由は、親が遺したものをすべて受け入れるのではなく、選別したことではないでしょうか。

まず、彼は法的な制度を正しく使いました。家族が多額の借金を残した場合、情に流されて返済義務を背負い込み、共倒れするケースは少なくありません。しかし、ユウスケさんは相続放棄の手続きをとることで、父の借金と自分の家計を法的に切り離しました。

一方で、彼は父のすべてを否定したわけではありません。幼少期に父から与えられた「芸術への感性」は肯定しました。借金は相続放棄すれば消えますが、身についた色彩感覚や教養は消えません。彼はそれを会社員としての仕事と組み合わせ、イラストレーターという独自の武器に昇華させました。

没落の程度に多寡はありますが、人生におけるステータスがダウンしたとき、多くの人が苦しむのは、「昔の生活水準に戻りたい」という執着です。これを「サンクコストへの未練」と呼びます。父は「社長に戻ること」に固執し、現実を受け入れられずに破滅しました。しかし、ユウスケさんは世田谷の生活を取り戻すことは目指しませんでした。代わりに目指したのは、身の丈に合ったサイズで、新しい幸せを積み上げること。

かつての父のような派手さはありませんが、現在のユウスケさんの暮らしは外部環境に左右されない、自立した幸福の形です。失ったものを嘆くのではなく、手元にあるものだけでどう幸せを組み立てるか。その視点の転換こそが、本当の意味での再建といえるでしょう。

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