今週のテーマは「彼氏の友達夫婦たちと、一泊二日の旅行。楽しかったはずなのに、帰宅後激怒した理由は?」という質問。さて、その答えとは?
▶【Q】はこちら:「何が悪かった?」付き合って4ヶ月でグループ旅行。直後に、彼女が別れを切り出したワケ
途中から、私はちゃんと笑えていただろうか。
彼氏の圭太から誘われた、一泊二日の河口湖への旅行。圭太の学生時代からの友達夫婦と、友達カップルの、3組合計6名での旅行だった。
彼女としての義務を果たすべく、私なりにかなり気を使ったつもりだった。
しかし、もう限界だった。
だから帰宅後、車を降りた途端に私はもう耐えられなくなり、本人に伝えることにした。
「圭太ってさ、本当に周りのこと考えないよね」
「ん?どういうこと?」
トンチンカンな顔をしている圭太を見て、余計に腹が立ってきた。でも彼の面目を潰さないよう、男友達の前で言わなかったのは、私の最後の気遣いだ。
「今回の旅行で、ちょっと私たちの関係を考え直したいんだけど」
友達や会社の人の前での振る舞いから、二人でいるときには見えない彼の別の一面がわかることがある。
A1:気遣いのカケラもない男だった。
圭太から河口湖への旅行に誘われたのは、1週間前のことだった。
「みんなで河口湖へ行こうって話していてさ。急なんだけど、奈緒の今週末の予定は、どんな感じ?碧夫婦ともう一組、優太とその彼女が来るよ」
「そうなんだ。空いてるよ」
「良かった!じゃあせっかくだし一緒に行こうよ」
「空いてる」と言ったものの、私は一瞬考える。うまく立ち回れるとは思うけれど、初対面の人ばかりの場所に飛び込むのは、自分の中で極力避けたい行為でもある。
「でも私、人見知りだしな…大丈夫かな」
「大丈夫だよ!みんないい奴だし。優太の彼女は会ったことないけど、碧の奥さんもいい人だし。きっと仲良くなれるよ」
知り合いの紹介で知り合い、圭太とは付き合って4ヶ月。3歳年下だけれど、彼は、優しくて頼れる良い彼氏だ。
そんな彼氏の学生時代からの友達との旅行を、断るわけにもいかない。私だけ「行かない」のも変だろう。だから私は、行くことを承諾した。
そしてあっという間に、約束の日はやってきた。
当日は、圭太の親友でもある碧くん夫婦が車を出してくれて、圭太の家まで迎えに来てくれた。
「碧、ありがとう。こちら奈緒です」
「初めまして、奈緒です」
圭太に紹介され、私は頭を下げる。碧くんは圭太とどこか雰囲気が似ており、爽やかで、良い人そうだった。
「お〜遂に。お噂はかねがね。碧です。こちらは妻の里穂です」
「よろしくお願いします」
そして碧くんの隣には、妻の里穂さんがいた。華奢で可愛らしい女性で、二人揃ってにこやかな笑顔で迎え入れてくれたので、とりあえず胸を撫で下ろす。
― いい人たちそうで良かった…!
こうして車へ乗り込み、碧くんの運転で河口湖を目指す。車内では色々と碧夫婦が話しかけてきてくれたので、私も気を使いながら会話をしていた。
「じゃあ圭太くんと奈緒さんは、奈緒さんのほうが少し年上ってこと?」
「そうなんですよ。3歳だけですけど。里穂さんたちはどんな感じなんですか?」
「私は碧くんの3歳下だから、奈緒さんとは6歳差だ」
― 6歳も年下なのか…。
会社の後輩だったら誰の世代だろう、なんてつい考える。そして話しながらもなんとなく、里穂ちゃんの私に対するタメ語などの感じからして、今回の旅メンバーのヒエラルキーが見え隠れする。
「そんなに差があります?なんか緊張するな…」
「ウケる。せっかくだし、今回は気楽にいきましょうよ」
私は圭太とは付き合い始めたばかりだ。一方の里穂ちゃんは結婚もしているし、このメンバーとの親交も深い。新参者の私が言えることはない。
そんなふうに色々と状況把握をしている間に、ふと隣を見ると、圭太はすっかり寝落ちしていた。
― この状況で、私一人に喋らせて寝るの…?
今日、私は皆様と初対面だ。しかも若干肩身が狭い立場だ。せめてこの場をセッティングした彼氏ならば、援軍をするとか。話を回すとか。色々とやることはある。
それなのに呑気に寝ている圭太に、私は本気で脚でもつねって叩き起こそうかと思った(それをしなかったのは、私の優しさでしかない)。
結局ずっと寝ている圭太をよそに、無事に河口湖へ到着した私たち。
チェックインをしていると、優太くんカップルもきて、ようやくみんなが揃った形になった。
そして買い出しをしてみんなでBBQ…と何とも楽しそうな響きの一泊二日の旅行。しかし私にとっては、ここからかなり長い夜の幕開けとなった…。
A2:人の前で彼女のことを下げ過ぎて、逆にダサい。
みんなで買い出しに行った時までは、よかった。しかし問題は、その後からだった。
コテージへ戻り、調理を開始しようとした時、男性陣は手伝う気なんてまったくないようでBBQスペースで飲み始めた。
別に、それはいい。
しかし残されたこちらの状況を言うと、碧くんの妻・里穂ちゃんがとても張り切っており、私が出る幕がほぼなかった。
ここも難しいところで、こういう男女混合旅行の料理シーンは、女性同士の牽制が生まれる時がある。今回は、まさにそういうパターンだった。
優太くんの彼女、ゆなちゃんも「私、料理得意なんで」と言って、二人が包丁を握って離さない。
― そういうことなら、任せた方がいいかな。
ここで「私もやります!」とか言って牽制し合っている中に入るのは大人げがなさすぎるし、絶対に違う。
だから私は野菜を洗ったり、包丁を洗ったり。サブ的な感じでできることをしていた。
しかし、その作業も尽きてくる。結局やることがなくなり、私は一瞬圭太のほうへ行くことにした。
「奈緒、どうしたの?」
「いや、優太くんの彼女と里穂さんで楽しそうにしているから、なんか居場所がなくて」
男性陣がビールを飲んでいたので、私も飲もうかなと思い、とりあえずアルコールを物色してみる。すると圭太が、急に私の肘を突いてきた。
「そうなの?でもさ、二人が動いているなら奈緒も手伝いなよ」
「『何か手伝いますか?』って言ってはいるんだけど、特にないらしくて…」
「いや、それは自分でやることを探しなよ」
圭太の言い分もわかる。二人の奥さんや彼女が働いているのに、自分の彼女はビールに手を伸ばそうとしている。
構図的にみて、おかしいだろう。
しかし私は女性陣のキッチンの奪い合いを尊重し、むしろ譲った感じだ。
― でもこんなこと言っても、きっとわからないんだろうな。
そう思っていると、碧くんが笑顔で手招きをしてくれた。
「まぁ、二人に任せておいたらいいんじゃないですか?奈緒さんも一緒に飲みましょうよ」
「いい人だなぁ」と思った矢先。圭太が、急に大きな声を出した。
「いやいや、奈緒は何もできないんだから、せめて邪魔だけはするなって。あっちへ行って、二人の手伝いするとか、何かしてきなよ」
― 何その言い方…。
もう少し、違う言い方はできないのだろうか。結局キッチンにもBBQスペースにも居場所がなくなってしまい、手持ち無沙汰になった私は一人でお皿を拭いたり、コップを置いたり…。とりあえずできることをやった。
そして二人が綺麗に盛り付けてくれたお肉やお野菜で、BBQが始まった。この時点で、私はもう疲れていたのかもしれない。
― こういう時、もっと上手く立ち回れたらいいのにな…。
そんな自己嫌悪にも襲われつつ、だんだんと帰りたくなってきたのは言うまでもない。
「ウマっ。お二人、料理上手ですね」
圭太が調子良い感じで、里穂ちゃんとゆなちゃんに話しかけている。私はそれを、最初はにこやかに見ていた。
しかし次の発言に、唖然としてしまった。
「いやいや。奈緒さんだって、普段料理するでしょ?」
「するけど…いや、里穂さんさすがですよ。奈緒は料理はできるけど、掃除とかがダメダメで」
「そうなの?」
「奈緒はああ見えて、抜けてるんですよ」
― 人前で、私のこと、下げて楽しい?
本人に悪気はないのかもしれない。でも圭太の態度は、不用意に人を傷つける。彼氏なら、私のことを褒めるくらいでいいのに、友達の前で、私の扱いが酷すぎる。
しかしここでケンカするなんて、もってのほか。
だから私は、一瞬泣きそうになるのをグッと抑えて、笑顔でピエロを演じることにした。
「そうなんですよ〜。なので今日、全部やっていただき助かりました。ありがとうございます」
こうしてなんとか一夜をやり過ごし、長かった一泊二日が終わった。
そしてこの旅で、私は圭太の本当の姿が見えた気がする。人前でカッコつけたがりで、彼女のことを下げて言うのがオシャレか何かだと思っている。
でも私は、そんな不当な扱いを受けるのはごめんだ。
相手が誰であれ、人を見下したりするのは良くないと親から習わなかったのだろうか。
些細なことかもしれない。でも大人になって、こういう根本的な考えはそう簡単には変わらないと思う。
― この人と将来結婚して、もし子どもが生まれたら…どうなるんだろう。
そんな不安も芽生えてきて、私は一旦、この関係を見直すことにした。
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▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟
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彼氏と別れようと思う瞬間とは

