◆自分たちの席を占領する中国人観光客

小林さんと友人が指定席に向かうと、すでにその席には見知らぬ3人組の観光客が陣取っていたという。中年の男性と若い女性が2人。男性は青いジャケットを着て、女性たちは派手なマフラーを身に着けていた。外国人観光客だと思われる。
「彼らは荷物を膝の上に積み上げ、笑い声を上げながら楽しそうに談笑していました」
小林さんはチケットを取り出し、丁寧に英語で「すみません、ここ私の席なんですが」と声をかけた。
しかし男性の反応は冷たかった。チケットをちらりと見ただけで、肩をすくめ中国語で「問題ない」ということを言っている。
◆「指定席なんだから、移動してもらわないと」
小林さんの友人がスマホで調べた簡単な中国語で「指定席なんだから、移動してもらわないと困るよ」と、説明を試みたが、相手は無表情のまま動こうとしない。そこで小林さんは車掌を呼ぶことにした。車掌が彼らにチケットの提示を求めると、事態は急展開した。男性がしぶしぶ財布を取り出し、“自由席の切符しか持っていない”ことが判明したのだ。車掌が「自由席へ移動するか、指定席に座る場合は差額を支払ってください」と言う。
その瞬間、周囲の乗客の視線が一斉に集まり、車内に気まずい空気が広がった。男性は顔をしかめ、女性たちも眉間にしわを寄せた。
結局、彼らは差額を支払い、別の車両の指定席へ移動した。去り際、男性は小声で文句をつぶやき、女性の一人は俯いて口をつぐんだ。「移動する際の足取りは重く、彼らの顔には明らかに苛立ちをふくんでいた」と小林さんは振り返る。
小林さんの友人は、ため息混じりに「ルールは守らないとね」と言った。窓の外に流れる風景を眺めながら、小林さんはようやく安堵することができたという。

