盗んだ車に乗っていたチワワ犬を川に投げ捨て死なせたなどとして、甲府市(山梨県)の暴力団組員(以下「被告人」)が起訴された事件の地裁判決が、来月23日に言い渡される予定だ。
被告人は大麻の密売に向かう途中だったとされ、動物愛護法違反のほか大麻取締法違反(営利目的所持)の罪でも起訴されている。
飼い主にとって大切な家族の一員であるペットを身勝手に殺す行為に対する、法的なペナルティはどうなっているのだろうか。
「証拠を残さないようにと思った」
報道によると、昨年8月、大麻の密売に向かう途中だった被告人が東名高速道路の海老名サービスエリア(神奈川県)で被害者の車を盗んだ。
その3時間後、車内にあった衣服やノートパソコンなどの所有物とともに、被害者のペットであったチワワを甲府市・梯町(かけはしまち)の県道から約9m下の川に放り投げたという。
犬は現場から130mほど離れた場所で、死亡した状態で発見された。
被告人は起訴内容を認めており、裁判では犬を投げ捨てた理由について「深く考えていなかったが、とりあえず、証拠を残さないようにと思った」などと述べたという。
裁判で検察側は「私たちの家族の命を奪った行為は殺人と同じで、到底、許すことはできない」などと記載された被害者の供述調書を読み上げ、「被害者の精神的苦痛は計り知れない」として被告人に拘禁刑5年を求刑している。
ペットを殺す行為に対する刑罰は?
犬は法律上「愛護動物」とされているため、みだりに殺す行為には動物愛護法違反として「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金」が法定刑として定められている(同法44条)。
また、犬は刑法上は「物」として扱われるので、同時に器物損壊罪が成立する(刑法261条)。この場合は一つの行為が2つの犯罪に該当するので、「観念的競合」といって、重い動物愛護法違反の刑で処断される(刑法54条)。
車を盗む行為については、通常、窃盗罪が成立する(刑法235条)。法定刑は「10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」だ。
そして、大麻を所持することは大麻取締法に違反する(同法24条の2)。本件では被告人は営利目的で所持していたため、法定刑は「7年以下の拘禁刑(情状によっては200万円以下の罰金も併科)」となる(同2項)。
これらの罪は併合罪(刑法45条)にあたり、量刑は「もっとも重い有期刑の長期に2分の1」を加えた範囲で刑が定められるため、理論上は拘禁刑の上限が「15年の拘禁刑」となる(本件での求刑は5年の拘禁刑)。
民事責任の追及は?
刑事責任の追及のほか、被害者は被告人に対し、犬を殺したことについて民事上の損害賠償責任を追及することが考えられる。損害賠償の対象となりうるのは財産的損害と精神的損害(慰謝料)である。
法律上、動物はあくまで「物」として扱われる。
通常、「物」を盗まれたり壊されたりした場合、その時価相当額について損害賠償請求が認められる。これに対し、精神的苦痛に対する損害賠償金である慰謝料は、特別の事情がない限りは認められない。
しかし、家族同然に飼育してきた犬や猫が死亡した場合にはその特別な事情があったとして、慰謝料請求が認められる余地がある。ただし、その場合でも損害賠償額はせいぜい数万円~数十万円程度にとどまる。

