男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
—あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:36歳女と結婚するには、覚悟が必要?バツイチ38歳男が、交際半年で別れを決断したワケ
あれは、ちょうどバレンタインデーの出来事だった。亮太が珍しく「ちょっと良い所に泊まろうよ」と言って、都内の高級ホテルの、しかもスイートルームを予約してくれた。
この時点で、私は気がつくべきだったのだろう。
でも、結婚願望のない彼氏に2年間も振り回された私は、“期待する”ということを放棄していたのかもしれない。
食事を終え、亮太が取ってくれていた部屋のドアを開けると、私は膝から崩れ落ちそうになった。
「何これ…」
ベッドの上にはバラの花びらが撒かれている。そこには、まさにインスタなどでよく見る、夢のようなシチュエーションが目の前に広がっていたのだ。
振り返ると、亮太が大きなバラの花束と共に、指輪の箱を開けながらひざまずいている。
「加奈、待たせてごめんね。結婚しよう」
嬉しすぎて、ここからしばらくの記憶がない。“幸せの絶頂”という言葉を実感できる日が来るなんて、思ってもみなかった。
しかし、振り返ると、ここまでずいぶんと長い道のりだった気がする。
交際当初、「俺はしばらく結婚しない」と宣言されていたから。あの言葉を聞いた時の私の絶望感たるや…。
しかし、こうして亮太はプロポーズをしてきた。結婚願望がなかったはずの彼が、どうして結婚する気になったのだろうか?
亮太と出会ったのは、知人の紹介だった。27歳独身、顔もカッコいい亮太。当時26歳だった私は、初めて会った時から彼に惹かれていた。
向こうも私を気に入ってくれたようで、私たちは、すぐに次のデートの約束をした。しかも、二度目のデートで、亮太はちゃんと「付き合おう」と言葉にしてくれた。
「加奈、付き合わない?ちゃんと大事にするから」
今時、そんなセリフを言う人がいるのかと驚いた記憶がある。もちろん返事はYESだし、私たちはとてもスムーズに、交際へと進んだ。
この時の私は、どこかで期待をしていた。
私は26歳で、彼は27歳。
そろそろ真剣に、結婚を考えるお年頃だ。
それに交際までスムーズに進んだので、心のどこかで「結婚も早そうだな」と思っていた。
しかし、現実は厳しい。
交際して半年が経った頃、何も言い出さない亮太に若干腹が立ち、私は思い切って彼に聞いてみた。
「亮太、将来のこととか…考えてるよね?」
すると、亮太はとんでもないことを言い始めた。
「うーん…。加奈のことは好きだし大切だけど…。しばらく結婚はしないと思う。これは加奈がどうこうとかじゃなくて、僕が結婚に向いてなさそうだなと思っていて。だから“結婚は考えられない”、というのが正直なところかな」
素直で、嘘をつかないのは亮太の良いところだ。それは認める。
でも、ここまで可能性のカケラもない言葉を投げかけられると、正直傷つく。周りはみんな結婚をしたり、結婚できそうな彼と付き合っている。
― どうして、私だけ…?
そんな思いが募っていく。
ただ、当時の彼は製薬会社の営業、つまりMRで、とにかく激務で忙しそうだった。彼が住んでいた三宿の家に私がよく通っていたのだけれど、週末も働くことも多く、横から見ていても「大変そうだな」とは思っていた。
でも、それと結婚は関係ない。
といっても、私たちはケンカもほとんどしなかったので、平和に楽しく交際をしているうちに、あっという間に1年が過ぎた。
ただもちろん、結婚の“け”の字も出てこない。
「亮太、将来どうなりたいの?」
結婚を匂わせすぎずに、将来の事を考える振りをして、彼の家で一緒に映画を観ている時に、さりげなく聞いてみた。
亮太から返ってきたのは、仕事のことばかりだった。
「そろそろ転職したいんだよね…。今の会社は成長させてくれたけど、次のステップに行きたいなと思っていて。ただ、今より給料が下がるかもしれないし、上がるかもしれないし…まだ未知数だけど。もし僕が、無職になっても加奈は大丈夫?」
冗談なのか本気なのかわからなかったけれど、私だって、ちゃんと正社員で働いている。
「もちろん。いざとなったら、私が養ってあげるよ」
「まじか。心強いな〜」
そんな話で終わっていた。
そして年が明け、「今年も結婚はないか」と諦めていた頃、亮太が、引っ越しをすることになった。
年末に彼は転職をし、給料が上がったこともあって、三宿から池尻大橋へ引っ越すらしい。そんなタイミングで、彼が急にこんなことを聞いてきた。
「加奈の家の契約って、いつ更新だっけ?」
「え?」
これまで、彼がそんなことを聞いてきたことがなかったので、私は驚いた。
「今年の6月までだよ!」
「そっか」
しかし、この話はそれ以上広がらなかった。
そしてしばらく経った金曜の夜、近所でご飯を食べた後、池尻大橋にある紹介制のバー『TWO LEAVES』に亮太が私を連れていってくれた。
一見、どこにあるのかわからない入り口。インターフォンを押して中に入ると、驚くほどハイセンスな内装が広がっている店内。そのバーは、まさに“業界人が集う店”と言う感じだった。
「亮太、こんな素敵なお店によく来るの?」
「この前、先輩に紹介してもらったんだ。いいでしょ、ここ」
「うん。すごく素敵」
集っている男女もおしゃれで、私は美味しいお酒と共に気分が高揚していく。
― いつの間にか、こんな素敵なお店の常連になれるほど、亮太は成長していたんだ。
そう思うと、すっかり感慨深くなってしまった。
尊敬の眼差しで亮太を見ていると、カウンター席の皆様は繋がっているのか、隣の方が私にも話しかけてきてくれた。
「亮太の彼女さん?」
「はい、そうです。初めまして、加奈と申します」
「加奈ちゃん!亮太から話は聞いてるよ」
「え〜そうなんですか?嬉しい。良い話だといいのですが(笑)」
「もちろんだよ!」
初めて行ったお店なのに、皆優しくて、良い雰囲気で、私もすっかり打ち解けていた。
帰り道、亮太が私の手を急に握ってきた。
普段私の手なんて握らないので、びっくりして見つめ返すと、少し照れくさそうにしている。
「もう2年だね」
そう言うと、亮太も頷いた。
「そうだね。あっという間だな」
「本当に、私たちってケンカとかしないよね。2年の間に、ケンカしたことあった?」
「いや、ないな…。あとさ、加奈って束縛とかもしないよね。『いつ、誰とどこで飲んでたの?』とか言わないじゃん?」
「言っても意味がないというか…別に、亮太のこと信じてるし」
「そっか。ありがとう」
「こちらこそ。それより、寒いから早く帰ろう」
そう言って、私はもう一度亮太の手を強く握った。酔っ払った亮太の手は、心なしかいつもより温かい気がした。
この日からしばらく経って、亮太が、プロポーズをしてくれた。
心の底から嬉しいし、未だに信じられない気持ちでいっぱいだ。
ただどうして、彼は結婚を決めてくれたのだろうか?現実なのに、嬉しくてふわふわとした気分が続いている。
▶前回:36歳女と結婚するには、覚悟が必要?バツイチ38歳男が、交際半年で別れを決断したワケ
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
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男が結婚を決めた理由は?

