11歳下のタイ人女性と国際結婚した日本人男性が、現地で居酒屋を経営するまで「外までお客さんを見送りに出ると、彼女がいて…」

11歳下のタイ人女性と国際結婚した日本人男性が、現地で居酒屋を経営するまで「外までお客さんを見送りに出ると、彼女がいて…」

◆店で得たのは経営権だけじゃなかった


伊藤タケシ
伊藤さんは基本的には毎日店舗に常駐している
『鳥屋 花 バンコク店』が連日賑わっている現在、目玉商品は1000バーツの鶏鍋コースだ。税込みでこの値段。しかもビール・焼酎・ハイボール・日本酒などの飲み放題3時間がついている。日本円では今だと5000円相当になるものの、バンコクにてこの値段で日本料理を飲み食いできる店はほかにない。このコースも伊藤さんが独立してからはじめたもの。アラカルトも他店と比較してかなり低価格設定だ。かといって料理の質を落としていない。伊藤さんには飲食店経営のセンスがあった。

お通し
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鶏刺し
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 伊藤さんが店長時代からここでがんばっていたのは、もうひとつ理由がある。実はタイ人の奥さんとこの店のまえで知りあっているのだ。

「店の周辺で妻の親戚がいくつかお店をやっていて、顔見知りだったんです。一番最初に妻に会ったのはもう結構まえですね」

 結構まえもなにも、伊藤さんがここで働きはじめたその月には奥さんと出会っている。

「外までお客さんを見送りに出ると、彼女がその辺にいて視野に入るんです。タイ人って外でご飯を食べる習慣があるので、よく顔を合わせて挨拶をする関係になりました。最初のころ、彼女からは“コボリ”って呼ばれていましたよ」

 コボリとは、タイ文学で有名な小説『メナムの残照』に出てくる日本兵の名前だ。かつては日本人男性を見るとタイ人はよくコボリと呼んでいたくらいタイではザ・日本人名なのだ。

「そのうち彼女がたまにひとりで店にご飯を食べにくるようになって。そのときにタイ語の手帳とか持ってるんですね。それでちょこちょこタイ語を教えてもらったり。それが半年1年と積み重なって、なんかこう学生みたいな恋愛に発展していったなと、今振り返ると思います」

披露宴会場
たくさんの人が祝福してくれた披露宴会場での一コマ(伊藤さん提供画像)
 ちなみに、最初の出会いの時点では奥さんはまだ高校生3年生だ。伊藤さんと奥さんは11歳差。知りあってから今年でもう14周年となる。ただ、結婚までもまた時間がかかっている。伊藤さんが結婚したのは2023年のことだ。

「知り合ってから結婚までに干支がほぼ1周してます」

 正確には結婚までに11年を要しているのだが、伊藤さんにつきあいはじめた年月などを聞くとすらすらと出てくる。タイに長く住んでいると、ずっと暑いだけの毎日なので時間の感覚がなくなっていき、去年と5年まえがわからなくなるのが多くの長期滞在者の傾向のはずなのに。

「彼女がつきあったアニバーサリー、入籍したアニバーサリー、田舎のナコンシータマラート県で披露宴をしたアニバーサリー、バンコクで披露宴したアニバーサリーって。とにかく記念日がいっぱいあるんです」

 なにをするのかといえば、「特につきあったアニバーサリーだけは必ず一緒にご飯行くとか」という。互いの誕生日はもちろんのこと、奥さんの両親の誕生日も「ちゃんとハッピーバースデーのメール送ってね」といわれているそうだ。

◆タイ人&日本人国際結婚カップルの生活費


 奥さんが現在会社員で、伊藤さんは飲食店経営なので夜が仕事。すれ違わないのだろうか。

「たしかに一緒にご飯を食べる機会が少ないので、土日に一緒に食事することは欠かさないようにしています」

 物価高のバンコクだ。日本人とタイ人の子どものいない世帯だと生活費はどれくらいかかるものなのだろうか。

「近くの賃貸マンションで1.5万バーツ(約7.5万円)、光熱費はいっても3000バーツ(約1.5万円)。ボクの趣味で使うお金がちょっと多いです」

 前述のとおり、ギターを弾く伊藤さん。ときどき音楽イベントなどに参加して自作曲を歌ったり、店の4階をスタジオにリフォームして、気心知れた仲間と音楽を楽しむ。伊藤さんは趣味人で、ほかにもいろいろ。

「趣味はだいたい2万バーツ(約10万円)くらいには収まっている」と伊藤さんは計算する。ほかに日用品購入も含めて月々の支出は5万バーツ(約25万円)といったところ。円安の中で計算するとかなりかかっているように見えるが、バーツでいえば多くの夫婦世帯の平均値かなという水準だ。

 一時期は自転車にもはまっていた。今はほとんど乗っていない。その理由については「3年くらいまえに網膜剥離になりまして」という。趣味に没頭するタイプで、1日100キロくらいを週に何回も、1か月1000キロは漕ぐということを日常的にやっていたため、タイのガタガタ道の振動や転倒で頭を打ったりしたこともあり、一般の人と比べて網膜が薄く剥がれやすい状態と病院で診断されてしまったそうだ。

「病院に一度行った半年後、右目の半分ぐらい真っ暗になっちゃって、手術して一応それなりに見えるようになったんですけど……」

 それで今は自転車に乗れないものの、運動はしたいということでランニングをしている。また、新しい趣味として今はカメラに夢中になっているようだ。

「カメラはお金かかりますね。ミラーレス一眼カメラで、遊びに行ったときにちょっとこだわった写真を撮って、タイにいるカメラの先生にも習ったり」

 冒頭の話に戻るが、カメラなどはタイでは日本よりも高額になるとはいえ、タイ・バーツで稼いでいれば所帯があってもこれくらいできる。海外で働く魅力でもある。

「ここ1年くらいでキックボクシングもはじめています」

 網膜剥離なのに? ただこれは縁があってのことなのだとか。日本チャンピオンになった人と知りあい、その人がタイでチームを作るということで人脈紹介したり、いろいろ手伝うことになった流れで、だ。

「タイにはおもしろい方が多いので、ご縁があればなんでもやりたいと思っています。全部そうです。仕事も自転車も縁ではじめた。人が一生懸命やっていくことをボクも共有したいと思っているので、そういうチャンスがある限り、可能な中でなんでもやりたいなと思います」

 好奇心もいまだバックパッカーが残っている。タイに城を築き、居場所もみつけた。それでも、いまだバックパッカー時代を過ごす伊藤さんである。

<取材・文・撮影/髙田胤臣>

【髙田胤臣】
髙田胤臣(たかだたねおみ)。タイ在住ライター。初訪タイ98年、移住2002年9月~。著書に彩図社「裏の歩き方」シリーズ、晶文社「亜細亜熱帯怪談」「タイ飯、沼」、光文社新書「だからタイはおもしろい」などのほか、電子書籍をAmazon kindleより自己出版。YouTube「バンコク・シーンsince1998│髙田胤臣」でも動画を公開中
配信元: 日刊SPA!

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