
◆響き渡る無邪気な絶叫
「主役は、幼稚園児くらいの男の子。まだ幼い彼にとって、新幹線は巨大なアトラクションなんです」子どもは「ママ~!」と甘えたり、お菓子を豪快に食べ散らかしたり、窓の外を見ては「〇〇だー!!」と全力で叫んだりしていたそうだ。
「騒ぐのは仕方がないです、子どもなので。それは分かっています。元気で可愛いな、と最初は思いました。でも、度が過ぎれば話は別です」
疲れ切った大人たちが泥のように眠っている静かな空間で、ハイトーンボイスだけがこだまする。それは、脳に直接響く「騒音」へと変わっていった。だが、工藤さんが(そしておそらく周囲の乗客全員が)本当に絶望したのは、子どもの行動ではなかった。
その隣にいる、母親の態度だ。
◆注意ゼロ。もはや誰の子なのか…
母親はずっと、スマホを見ていた。子どもがどれだけ大声を出して、お菓子をボリボリと食べ散らかしても、視線はスマホの画面に釘付けだった。たまに「そうだね~」と生返事をするだけで、顔すら上げない。思わず「え、注意しないの?」と目を疑った。
「普通は『しーっ、静かにしようね』とか『もっと小さい声でね』などの声かけが親としてあるべきですが、一切なかったんです。子どもがどんなにボリュームを上げても、彼のママは動じない。まるで、隣で騒いでいるのが自分の子どもではないかのような感じです」
工藤さんは「何をそんなにスマホで見ることがあるんだ?」と心の中でツッコミを入れた。せっかく新幹線代を払って得た休息の時間を、一方的に蹂躙されているような気分になったという。

