古い、狭いをポジティブに捉え、豊かな暮らしを追求する人々を訪ねた&Premium147号(2026年3月号)「部屋を心地よく、整える」より、卯月えまさんの住まいを紹介します。

色も柄も国も時間も種類も超えて隅々まで飾る。
「巷で『死ぬまでにしたい10のこと』が流行っていた頃。私も考えてみたんです。閃いたのはひとつだけ。『リノベーションをする』でした」
残りの9つが浮かばなかったことから「これは啓示かもしれないなと思った」とは、卯月えまさん。それ以前は、身軽でいたくて、都内にばかり家を借りてきたという。
「リノベーションをするとなると家を買う必要があります。突飛なアイデアに私自身、驚きました(笑)」
ただ、若い頃から中南米を中心に年に何度も海外に出かけるほど、元来、行動派。「年を重ねたら腰が重くなるだろう」との思いもよぎり、ワクワクに押されるようにして物件を探し始め、なんと2軒目で今の家に決めてしまったという。
予算との兼ね合いで範囲を広げて見つけたのは、都内から車で2時間ほどの地に立つ、築55年のマンションの一室。118㎡ととても広い。
「とにかく持ち物が多くて。アンティークの家具や古道具、旅先から持ち帰った民芸品が大量にあり、そういったものを全部飾りたかったので、広い家が条件だったんです。だから古さは想定内。ここはその昔、二戸の住戸を繋いで一戸にした経緯があったらしく、とにかくダイナミック! むしろ古い家だからこその物語に、魅了されてしまいました」
リノベーションをするにあたってこだわったのは、広さを伸びやかに生かすこと、飾れること。それで、間仕切るのをやめようと思いつく。2LDKだった間取りを、端から端まで13mもある一空間にしてしまった。
「古びていたり、人の気勢を感じられたりするものが好きで、床には足場板の古材を敷きました。黄みがかった塗装を施した壁との相性もいい。性能のいいアルミサッシに替え、壁に断熱材を入れたら、今の時代の気候に合った快適さが叶いました」
年月をかけて歩んできた道すがら手に入れたたくさんの家具や道具、小物まで。加えて、この家の変遷。全部並べて飾って、眺めながら暮らすのが「楽しくて仕方ない」と話す。「傍目には片付いていないように映るかもしれません。でも、あれもこれもなところが私、私の家なんです」







卯月えま自営業
企業のリサーチ業務を請け負いつつ、合間の休暇で旅行を楽しむ。近くアゼルバイジャンへ行く予定。リノベーションは〈straight design lab〉に依頼。
photo : MEGUMI edit & text : Marika Nakashima
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COZY ROOMS / 部屋を心地よく、整える。&Premium No. 147
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