なぜ日本庭園は「常緑樹」が多いのか? 世界が憧れる日本の庭木文化と美意識

なぜ日本庭園は「常緑樹」が多いのか? 世界が憧れる日本の庭木文化と美意識

「庭木」という、日本独自の文化

修学院離宮庭園(京都)
見事に剪定されたマツの木々が並ぶ景観、修学院離宮庭園(京都)。

そうした伝統的な日本庭園に使われる木々は、長い時間をかけて、庭にふさわしい樹種が選ばれ、育てられ、仕立てられ、「庭木」と呼ばれる特別な存在となりました。

たとえば、マツ、モミジ、ツツジ、サツキ、マキ。

どれも身近な木ですが、日本庭園の中では独自の進化を遂げています。自然に生えている姿をそのまま持ち込むのではなく、定期的な剪定などの手入れによって、理想とされる姿へと導かれてきたのです。

庭木は、言ってみれば人と自然が一緒につくりあげる存在です。年月をかけて木々を形づくり、育てていく。その過程そのものが、日本の庭園文化なのです。

南禅寺の庭(京都)
南禅寺の庭(京都)。モミジをはじめとする落葉樹の紅葉で、庭園は秋の気配に包まれる。Blanscape/Shutterstock.com

剪定が、景観を 作る

詩仙堂庭園(京都)
秋、綺麗に刈り込みされたツツジの緑と、紅葉のモミジの対比。ツツジの季節には、刈り込み部分に白やピンクの花が咲き、モミジは柔らかな緑となって、いずれも季節感をより引き立てる。詩仙堂庭園(京都)。seaonweb/Shutterstock.com

さて、日本庭園を語るうえで欠かせないのが、剪定技術です。

剪定というと「伸びた枝を切る作業」と思われがちですが、日本庭園における剪定は、単なる管理作業ではありません。木々の健康を守り、景観そのものを作る、極めて重要な技術です。

剪定作業
剪定作業中の庭師たち、修学院離宮庭園(京都)。熟練の技術が必要とされる繊細な作業。HanzoPhoto/Shutterstock.com

日本の剪定技術として、典型的なのが「すかし剪定」。枝を一様に刈り込むのではなく、不要な枝を選び、間引き、あえて空間を残します。そうすることで風が通り、病害虫を予防し、光が差し込み、枝ぶりそのものが美しく浮かび上がります。

曼殊院庭園(京都)
マツの木を囲む、玉ものと呼ばれる丸い刈り込みの灌木は、全体で蓬莱思想の亀島を構成する。曼殊院庭園(京都)。

一方で、日本庭園の剪定技術はこれだけではありません。ツツジやサツキなどで見られる「玉もの」と呼ばれる刈り込みも、その一つです。丸く整えられた樹形は、庭にリズムや奥行きを与え、景観のアクセントとして機能します。また「大刈り込み」では、いくつもの木々をまとめて刈り込み、ダイナミックな風景を作り出します。

すかす剪定、刈り込む剪定。そのどちらも、木の性質や庭全体の意図を読み取ったうえで使い分けられています。

修学院離宮庭園(京都)
修学院離宮庭園(京都)の浴龍池を望む景観をつくる、ダイナミックな大刈り込みの例。AaronChenPS2/Shutterstock.com

こうした日本独特の剪定技術は、海外からも羨望のまなざしを集めています。近年では、日本庭園や日本式剪定を学ぶために来日する庭師やランドスケープ関係者も少なくありません。

自然に逆らわず、木々の個性を読み取り、その魅力を最大限に引き出す。この考え方そのものが、日本ならではの美意識なのです。

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