庭木の王様・松(マツ)
日本庭園を象徴する庭木といえば、やはりマツでしょう。 マツは常緑で、長寿で、格式を感じさせる存在です。古くは神の依代となる神聖な存在とも考えられてきました。そのため、神社仏閣や大名庭園など、重要な庭園には欠かせない樹木とされてきました。

ただし、マツは放っておいて美しくなる木ではありません。剪定をしてこそ、本来の姿が現れます。春には、新芽を一本一本摘み取り成長を調整する「みどりつみ」、秋には古くなった葉を落として樹形を整える「もみあげ」という、マツ独特の手入れがあります。いずれも木の状態を見極めながら行う繊細な作業で、熟練の庭師の仕事とされています。また、クロマツ、アカマツ、ゴヨウマツなど、種類ごとに性質が異なり、庭の役割や景観に応じて仕立て方も変わります。
大変に手間がかかる庭木ではありますが、それゆえに、庭の中に一本マツがあるだけで空間は引き締まり、風景に格が生まれます。「マツがあるだけで日本庭園らしくなる」といわれる理由も、そこにあります。
苔(コケ)がつくる、日本庭園の静けさ

また、日本庭園と聞いて、多くの人が思い浮かべる植物のひとつに、コケがあります。コケは庭木のように目立つ存在ではありませんが、庭全体の雰囲気を大きく左右する重要な要素です。
コケは地表を覆い、土を隠し、庭に静けさと落ち着きをもたらします。光をやわらかく受け止め、雨に濡れることで、いっそう深い表情を見せてくれます。
また、コケがあることで、庭は一気に「時間を重ねた風景」に見えるようになります。

常緑樹が庭の骨格を作り、庭木が景観を形づくり、コケがその足元を静かに支える。苔は、日本庭園に欠かせない名脇役なのです。
